昨年10月のフッテージ上映以来の来日となるマーティン・スコセッシ監督。今回の記者会見には、現在かくれキリシタンの帳方(責任者)である村上茂則が登壇し、映画の感想などを語った。
原作と出会ってから28年が経ったというスコセッシ監督は、本作の完成と日本での公開に対して「夢がかなったという思い」と挨拶。原作を読んで「どう解釈すべきか答えが見つからなかった。(原作と出会った当時は)日本の文化に対する理解がまだそこまでなかったと思う」と振り返り「試行錯誤の上、年を重ねていくことでいろいろ学んだ」と語った。また「若いころに撮っていたら全然違う作品になっていたと思う」とも語り「再婚して子どもが生まれたことで、私生活の変化が可能性を押し広げる結果になった」とその理由を明かした。
本作がバチカンでも上映され、称賛の声が出ていることについてスコセッシ監督は「『映画で伝えたいことが成果として上がれてばいいですね』という言葉をいただいた」と語り、ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王との謁見については「相手を緊張させない方で、リラックスしてお会いするころができた」と振り返った。
本作の原作を読んだ時期は「自分の信仰心を見失っていた」というスコセッシ監督。そこで「深く探求しなければならないと教えられた」と原作への思いを語り「人生は疑念だらけで、何で生まれてきたかは分からない。そういった気持ちが創作意欲を掻き立てる」と原作への並々ならぬ思いを明かした。また、日本のキリシタンが弾圧されていた当時はさまざまな拷問による暴力が行われていたが「普遍的な真実であるとキリスト教を持ってきたことが、侵害であり暴力なのではないか」とも語った。
劇中では“人間の弱さ”という点を印象的に描いているが「弱い者を弾かずに受け入れる。強くなる場合もあるし、うまくいかない場合もある。社会ではみんなが強くなければいけないわけではない」と自身の思いを語った。また、会見の終盤で登壇した、かくれキリシタンの帳方である村上が「涙が出てくる」と感想を語り「日本人に観てもらいたい」と思いを明かすと、スコセッシ監督は「日本の文化や日本にいたキリシタンの勇気を損なうことがないように描いた」と敬意を表した。
戦後日本文学の最高峰とも称される遠藤周作の「沈黙」(新潮文庫刊)をマーティン・スコセッシが映画化した本作。17世紀江戸初期、激しいキリシタン弾圧の中で棄教したとされる師の真実を確かめるために、たどり着いたポルトガル司祭の目に映った想像を絶する日本。人間にとって本当に大切なものとは何かを壮大な映像で描く。アンドリュー・ガーフィールド、リーアム・ニーソン、アダム・ドライバーに加え、窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮ら実力派豪華キャストが集結。
映画『沈黙-サイレンス-』は2017年1月21日(土)より全国で公開!
監督:マーティン・スコセッシ
原作:遠藤周作「沈黙」(新潮文庫刊)
出演:アンドリュー・ガーフィールド、リーアム・ニーソン、アダム・ドライバー、窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシ
配給:KADOKAWA
Photo Credit Kerry Brown
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