孤独を抱えた女子高生、家庭を失いつつある主婦、LGBTを親に告白できない弁当屋の息子、故郷から逃げ出したボクサー、結婚に焦るアラサー女性研究者―。オリンピックを前にこの数年で大きく進化していくであろう都市、東京。しかしその「すみっこ」には変わらぬ日常、自分なりの価値観を大事にしながら生きている多くの普通の人たちがいる。この物語の舞台はそれぞれに生き辛さを抱えながら、それでも懸命に暮らしている人たちが集まる共同台所「すみっこごはん」。美味しい料理とユーモアと涙、そして少々の苦味に彩られる新たな東京ヒューマンストーリーとして描かれる。
主人公の女子高生・沢渡楓を演じるのはドラマ「ごめんね青春!」、「時をかける少女」などの話題作で鮮烈な輝きを放ち、注目を集める若手女優・黒島結菜。周りにあわせるように俯きがちに生きてきた楓が「すみっこごはん」に集う様々な人々、そしてその成り立ちの秘密に触れて大人へと成長していく姿を瑞々しく演じる。『しあわせのパン』『繕い裁つ人』などの作品で市井に生きる人々の真摯な心情を繊細に描き出してきた三島有紀子監督が、いつもまっすぐでひたむきな彼女の新しい魅力をどのように引き出していくかに注目が集まる。
黒島結菜(沢渡楓役)コメント
―脚本を読んだ時の感想について
脚本を読ませていただいた時、美味しいものは人を笑顔にするんだなということを最初に感じました。すみっこごはんに集まる人達は、自分に自信がなかったり悩みを持っていたりします。それでも真っ直ぐに喜びや悲しみと向き合って生きている姿に、私もそうやって生きていくべきだと心を動かされました。また、私が演じる楓はよく写真を撮っているのですが、楓が撮るものは“失くなってほしくないもの”という理由があります。なにかハッと気づかされるものがありました。そして読み進めるほど、こんな素敵なドラマの現場に早く入りたい!という気持ちが強くなっていき、とても楽しみになりました。
―“沢渡楓”役の印象と役作りについて
『撮影が終わって普段の自分に戻っても楓を通して物事を考えて欲しい。「こんなとき楓だったらどうするか」と常に考えて生活してほしい。』初めて監督にお会いした時に、監督はそう仰っていました。それをずっと意識しています。楓は思っていることを口にするのがあまり得意ではなく、我慢していることが多い女の子です。でもすみっこごはんの人達と出会うことで、自分の想いを素直に伝えることができるようになります。また今回、お料理をするシーンがたくさんあります。鰹節を削ったり、昔ながらの調理法で作ることが多く、初めての経験なので楽しみです。
―“ごはん”にまつわる思い出について
ここ最近1人でご飯を食べることが出来ず、友達を誘ってご飯を食べるか、食べないで早く寝ることが多くなっています。1人でご飯を食べることは平気だったのですが、なぜか美味しいものを1人で食べても、寂しいという気持ちが勝ってしまいます。それは、誰かと食べる美味しいご飯の味というものを知ってしまったからだと感じています。でもこのドラマでは、誰と食べるかではなく“おいしいものはおいしい”という事も伝えたいです。私自身このドラマを通して、“ごはん”というものを深く知る良いきっかけになればと思っています。
―視聴者の皆さまにメッセージ
このドラマには、“きちんと伝えていく”、“お互いの尊厳を守る”という2つの軸があります。こんなにも温かく優しいドラマに参加させていただけることがとても幸せです。素晴らしいスタッフさんとキャストの皆さんと一緒に、観てくれる方々の心に残る作品にしていきますので、よろしくお願いします。
三島有紀子監督 コメント
―「東京すみっこごはん」ドラマ化について
すみっこごはんに集まる人々は、少々風変わりでオカシナ人たちですがその実、いろんなことに真摯に向き合いもがきながら生きています。だからこそ、きちんと相手を尊重して関わる=尊厳を守る、そんな関係性をしっかりと描きたいと思いました。
主人公の楓は、そんな人たちが自分らしい生き方に向かっていく姿を見つめ、また、すみっこごはんにある風変わりなレシピを見ていく中で、大きく欠落していた部分が少しだけ埋まり、“人生がちょっぴりおいしくなる秘訣”を知っていく作品です。
このドラマを観終わった後、空を仰いで叫びたくなってもらいたい。「いただきます!」ごはんはもちろん、自然や人との出会い…、嬉しいことも悲しいことも、この世のすべて、あらゆることを“味わう”覚悟を決める、もしかしたらたぶんそんなことが人生がおいしくなる秘訣、なのかもしれないなと思って作ります。
―主人公の沢渡楓役を演じる、黒島結菜さんの印象について
黒島さん自身がよく写真を撮っていることを知っていて、その写真を見て、「ああ、こういうものにシャッターを切る人なんだなあ」ととても興味深く追いかけていました。「感じる力、想像する力のとても豊かな人だろうな」と想像していたのですが、初めてお会いした時、思っていた通りの方で、尚且つとても落ち着いていました。黒島さんとみんなで「楓」の人生のひとときの旅に出たいと思います。
―“ごはん”にまつわる思い出について
母親がとてもお料理がうまかったので、カツオブシでしっかり出汁をとったお味噌汁が大好きでした。あったかいお味噌汁は心をホッとさせます。落ち込んだりいろんなことがあったりすると、それに気づいた母親が 「とりあえず食べ」とごはんとお味噌汁を作って出してくれたのを思い出します。神戸の震災の時、取材したおばあちゃんが「あったかいことがごちそうや」とあたためなおしたお味噌汁を出してくれ、その温かいお味噌汁が体に沁み渡り涙が溢れました。だから、最後の晩餐で何が食べたいか?ともし聞かれたら、迷わず「蕪とお揚げさんのお味噌汁!」と答えます。
成田名璃子(原作)コメント
―「東京すみっこごはん」ドラマ化について
とても嬉しく、光栄でした。原作では何人かの登場人物の視点で世界が語られ、心理描写が多いので、ドラマではストーリー展開にどのような味つけがされるのか本当に楽しみにしていました。いざ台本を拝読してみると、すみっこごはんの世界観を継承しながら、原作にはないドラマオリジナルの登場人物やエピソードで物語に深みと広がりを与えていただいており、何度も泣くことに。映像化が待ち遠しいです。
―“ごはん”にまつわる思い出について
三十代も半ばを過ぎて色々とあり、一時実家に身を寄せたことがありました。日々沈んで過ごしながら、両親と弟と食卓を囲んでいたのですが、ある日ふと、大人になってからこんなに毎日家族でごはんを食べられて幸せだと思った瞬間がありました。同時に、いつかこの日々を懐かしく、有り難かったと思う日がくるだろうと。先日父が亡くなり、美味しそうによく食べていた父の姿を思い出しています。
―視聴者の皆さまにメッセージ
目まぐるしく変化する世の中から取り残されたような場所、すみっこごはん。ドラマ版を観て、私も視聴者のみなさんといっしょに癒やされたいと思います。原作を読んでくださった方は、ドラマ版での違いもどうぞ楽しみにしてくださいね。
幼い頃に両親を失い、孤独を抱えつつ周囲にあわせるようにして生きてきた女子高生・沢渡楓(黒島結菜)は、ある日の学校の帰り道、突然現れた黒猫に導かれ、扉に「すみっこごはん」と書かれた一軒家にたどり着く。そこはそれぞれに悩みを抱えながらも楽しくごはんを食べるために集まる人たちの共同台所だった。彼らの巻き起こす様々な騒動の中で人々の優しさや苦しみ、そして美味しいごはんに触れ、生きることの意味を感じとっていく楓だったが、やがてこの場所に存続の危機が訪れたことで、「すみっこごはん」誕生をめぐる一人の女性の切なくも美しい人生を知ることになる。
「連続ドラマW 東京すみっこごはん」は2017年5月より毎週土曜日22:00放送!(第1話無料放送)
監督:三島有紀子
原作:成田名璃子「東京すみっこごはん」(光文社文庫刊)
出演:黒島結菜ほか