本作は、第二次世界大戦中の広島・呉を舞台に、戦況が悪化していく中で、大切なものを失いながらも前を向く女性を描いたアニメーション作品。主人公・すずを演じるのはアニメーション映画初主演となる女優・のん。片渕須直監督が「のんさん以外のすずさんは考えられない」とその声に惚れ込んだ。クラウドファンディングに始まり日本中の想いが結集して珠玉のアニメーション映画が完成した。
3月3日(金)に行われた第40回日本アカデミー賞では、栄えある最優秀アニメーション作品賞を受賞。授賞式には、片渕須直監督、音楽を手掛けたコトリンゴ、企画段階から片渕監督を支え続けてきた丸山正雄プロデューサーが登壇し、喜びを分かち合った。片渕監督は「諦めなくてよかったです。途中でもういいかとあきらめたら皆さんの心の中にすずさんが宿ることがなかったのかと考えると、今ここに立てていること自体が皆さんのおかげだと思います」と思いを明かした。「片渕作品は売れない」そう言われ資金難に苦しんだ時代もあったという片渕監督。数々の苦難と挫折を乗り越えた監督の言葉は人々の心を打ち、SNS上では祝福の言葉が相次いだ。
また今回、片渕須直監督は、文化庁が主催する第67回芸術選奨において、文部科学大臣賞(映画部門)を受賞した。芸術選奨とは、芸術の各分野において優れた業績を挙げた人物や、新たな境地を切り拓いた人物に与えられる賞で、毎年、演劇、映画、音楽、舞踊、文学、美術、放送、大衆芸能、芸術振興、評論等、メディア芸術の11部門で表彰される。贈賞の理由として文化庁は「こうの史代の原作漫画の素材を生かしてアニメーションに翻案した片渕須直氏は、綿密な映像・音響設計で映画ならではの深い感動を観客に体験させる。すずや家族の慎ましい生活の細部、そして、時間的、空間的な距離感がリアルに迫る。戦争を知らない世代が戦争の恐怖とともに、世界の片隅にある何気ない日常の大切さ、そして希望までを観る者に静かに感じさせる」とし、その功績を讃えている。これを受け片渕監督は「日本映画全体の中でアニメーションが高く評価されていること自体が嬉しいですし、いろいろな方向性や技法を用いた作品が多々ある中で、こうして認めていただけたことがありがたいです」と語っている。
昨年11月の公開から数えて17週目となり、現在までの累計動員は180万人、累計興行収入は23億円を突破。現在27個の賞を受賞している(3月8日現在)。さらに今後も片渕監督は、3月12日には東京アニメアワードフェスティバルでの特別上映・舞台挨拶、3月13日~3月16日には香港、3月19日には静岡・浜松シネマイーラと静岡シネギャラリーでの舞台挨拶、3月26日には群馬・高崎映画祭授賞式など国内外の舞台挨拶やイベントが予定されており、まだまだ勢いは止まらない。
映画『この世界の片隅』は全国で公開中!
監督・脚本:片渕須直
原作:こうの史代「この世界の片隅に」(双葉社刊)
声の出演:のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、潘めぐみ、岩井七世、澁谷天外
配給:東京テアトル
©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会