香港国際映画祭は1977年に始まったアジアで最も歴史がある国際映画祭の一つで、2017年で41回目を迎える。本年は4月11日から25日に開催され、50か国以上から寄せられたあらゆるジャンルの280作品が上映された。本作が出品されたGALA部門は受賞セレモニー後に、後進の目標となる映画人たちの作品を上映される部門。石井監督は、これまでにも自主製作の長編特集が組まれたり、アジアンアワードでの「第一回エドワード・ヤン記念アジア新人監督大賞」を受賞するなど、同映画祭と縁が深く、これまでの活躍と映画祭への貢献が評価され、今回の上映と受賞セレモニーでのプレゼンターへの抜擢となった。
今回、4月23日(日)の上映前と25日(火)の上映後のティーチインに石井裕也監督と池松壮亮が登壇した。また、石井監督は23日に行われたコンペティション部門の受賞セレモニーにもプレゼンターとしても参加した。23日の上映前に登壇した石井監督は「香港には何回も来ていますが、来るたびに大きな刺激を受ける街です。この作品をこのような形で皆さんにお見せできることを大変光栄に思います」と挨拶。池松も「上映前なのであまり多くのことは語らないでおこうと思いますが、香港の皆さまがこの作品を見てどんなことを感じるか、とても楽しみにしています」と喜びを明かした。
25日の上映後に行われたティーチインでは観客から多くの質問が投げかけられた。石井監督は「多くの香港人にとって東京は、買い物をしたり、スカイツリーに行ったりと、観光の街というイメージがあります。お二人にとって東京とはどういう街ですか?」と聞かれ「僕は、今日で3日目の香港ですけど、街を歩いているとすごく楽しいです。でも香港で生きている皆さんも生きづらさを感じたり、むなしさを感じたりすることがあると思うんです。僕も東京で暮らしていて、そういった気分をいつも味わっています」と答え、池松も「僕は今26歳で、生まれは東京ではないんですが、7年間ぐらい住んでます。正直、便利な街だとは思いますが、その一方で人の思いや人の死だったりが置き去りにされていて、人が、特に若者がどんどん生きづらくなっていることを感じています。ただ、日本は大好きですし、個人的にはこの状況を何とかしたいと思ってます」と語った。
『舟を編む』をはじめとした作品が香港で人気が高い石井監督だが、観客から「『ぼくたちの家族』との共通点もあるように感じた」との感想が出ると、石井監督は「生きづらさや辛い人生というものがあって、映画製作者としては、いかにそれを乗り越えて生きていくかということを生涯のテーマにしたいと今のところは思っています」と自身の作品に通底する作品のテーマ性についてコメント。また、池松は、本作で思ったことを言葉にせずにはいられず、速射砲のように話す慎二を演じたことについて「石井さんから脚本を貰った時に『当て書きをした』と言われたんですけど、僕はこんなに優しい人間ではないですし、こんなにチャーミングでもありません」と吐露。20分間のティーチインは挙手が絶えず、あっという間に終了した。
本作は、現代の東京を舞台に、誰かに甘えることもせず日々をやり過ごす美香と、工事現場で日雇いの仕事をしながら死の気配を常に感じ、どこかに希望を見出そうとひたむきに生きる慎二が生きづらさを抱えながら出会い、恋が始まる瞬間を描くラブストーリー。美香役を本作が映画初主演となる石橋静河、慎二役を池松壮亮が演じる。また、『舟を編む』『バンクーバーの朝日』など33歳にして本作が長編映画12作目となる石井裕也監督がメガホンを取る。
『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』は2017年5月13日(土)より新宿ピカデリー、ユーロスペースにて先行公開、5月27日(土)より全国で公開!
監督・脚本:石井裕也
原作:最果タヒ「夜空はいつでも最高密度の青色だ」(リトルモア刊)
出演:石橋静河、池松壮亮、佐藤玲、三浦貴大、ポール・マグサリン/市川実日子/松田龍平/田中哲司
配給:東京テアトル、リトルモア
©2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会