第70回カンヌ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞と審査員特別グランプリをW受賞した『BPM(Beats Per Minute)』が2017年に日本で公開されることが決定した。
舞台は90年代初めのパリ。エイズの感染による差別や不当な扱いに抗議し、政府や製薬会社などへ変革に挑んだ実在の団体「ACT UP」の活動を通して、若者たちの恋と人生の輝きを描く。ACT UPのメンバーだったという監督自身の経験が物語のベースとなっている。明日も知れぬ命を抱える主人公の葛藤、感染者を一人でも減らしたい、友人の命を助けたいという情熱、恋人との限りある愛・・・。生と死、理想と現実の狭間で揺れ動きながらも、強く生きる若者たち。彼らの生き生きとした表情や行動が、力強くエモーショナルな映像と共に綴られる感動作。
本作のメガホンを取るのは、第61回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『パリ20区、僕たちのクラス』の脚本・編集を担当し、監督した『イースタン・ボーイズ』では第70回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門の最高賞を受賞したロバン・カンピヨ監督で、本作が長編第3作となる。本作に登場する団体「ACT UP」は、正式名称がthe AIDS Coalition to Unleash Power=力を解き放つためのエイズ連合。アクトアップ・ニューヨークは1987年3月にニューヨークで発足したエイズ・アクティビストの団体。エイズ政策に感染者の声を反映させることに力を入れ、差別や不当な扱いに抗議して、政府、製薬会社などに対しデモなどの直接行動に訴えることもしばしばある。現在は全米各地やフランス、インド、ネパールなどにもアクトアップが作られている。
本作は、5月28日に幕を閉じた第70回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、国際批評家連盟賞と審査員特別グランプリをW受賞した。熱心なLGBT人権活動家でもある同映画祭審査員長のアルモドバル監督は、本作が最高賞であるパルム・ドールを受賞しなかったことについて「映画は素晴らしかった。最初から最後まで心を打たれたよ。でも審査は民主的な方法で行われた。今言えるのはこれだけだ」と答えて、涙を流し「ロバン・カンピヨ監督の作品は、我々(審査員)の大多数が気に入っていた。きっとどの国でも成功を収めるだろう。ストーリーは何年も前に起こったことであり、これはLGBTの人々によって伝えられるべきである。不公平な世の中について語っていて、何人もの命を救った本物のヒーローたちをカンピヨ監督は描いてくれた。それには私たちも共感している」と語っている。
一方、本作のロバン・カンピヨ監督は授賞式のスピーチで「この作品は、エイズで亡くなられた方へのオマージュであるとともに、頑張って生きている方々を勇気づけるものでもあります。勇気を持って闘い続けている人、当時命を懸けて(ACT UP)の活動を行った人を想い、この作品を作りました」と企画の意図を明らかにし、授賞式後の記者会見では「とてもパーソナルな内容である本作を作るにあたり、感情的にならないように必死だったと」と撮影当時を振り返る場面もあった。さらに、ACT UPのメンバーだった監督は、治療薬を提供しないフランスの製薬会社を巡って、ミッテラン政権と闘った当時の経験を振り返り「この時代を生きるヒーローを描きたかったんだ。10年間もこの感染症に耐えなければいけならず、世間に被害者として見られ、急に“病んでいるホモセクシュアル”として見なされながらも、何人もの命を救う行動を起こしたことは、英雄的だったと思う」と語った。
映画『BPM(Beats Per Minutes』は2017年に全国で公開!
脚本・監督:ロバン・カンピヨ
出演:ナウエル・ペレ・ビスカヤー、アーノード・ヴァロワ、アデル・エネル