ユン・ジェホ監督

北朝鮮女性の生き様を記録したドキュメンタリー『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』のトークイベントが6月6日(火)に渋谷・ユーロライブで行われ、ユン・ジェホ監督が登壇した。

公開を直前に控えた今回のイベントには、フランスと韓国を拠点に映画製作を続け、昨年のカンヌ国際映画祭に本作のほかに短編も出品するなど注目の新鋭ユン・ジェホ監督が緊急来日し、本作の過酷な脱北の道のりなどを語った。

「はじめまして、ありがとうございます」と流ちょうな日本語で挨拶したユン・ジェホ監督。本作の撮影は過酷を極めているが「作るのに長い時間を掛けました」と語るユン監督は「どう思ったのかを聞きたい」と笑顔を見せた。常に緊迫感に溢れており、撮影に苦労したことは想像に難くない本作。特に苦労した撮影についてユン監督は「山を越えるシーン」を挙げ「とにかく山を越えないといけないということだけを考えていました」とまさに過酷な撮影であったことを窺わせた。

話が韓国内での脱北者への反応について及ぶと「偏見もあり、コミュニケーションも取らなければいけないけど、まだそこまではいっていない」と変わらない状況であることに残念そうな表情を浮かべた。脱北者の中には、映画俳優がいたり、また俳優を志している人もおり「知り合いの監督がキャスティングをするときは紹介している」と明かした。さらに韓国の大統領が変わったことで「前よりはよくなるんじゃないかと思っている」と期待を寄せた。

さらに主人公であるマダム・ベーの暮らしについては「北朝鮮では田舎で平凡な生活だった。中国に売られた後は、(北朝鮮で)住んでいたアパートよりも生活の状況はひどかった。北朝鮮での生活よりも貧しい生活をしていたことが衝撃だった」と興味深い話も飛び出した。

イベントでユン監督は、自身の子ども時代を振り返り「日本文化が禁止されていた。禁止されると興味がわいた」と明かし「日本人では宮崎駿さんや是枝裕和さんが好き」と笑顔で語る場面もあった。最後に「小さな作品ではありますが、人間として尊敬し、大切に思う方の物語です。一人でも多くの方に見てもらえれば」と本作をアピールした。

たった一年の出稼ぎのはずが 騙され売られた北朝鮮女性の母として、そして妻として、二つの家族の間で揺れる数奇な運命を記憶したドキュメンタリー映画である本作。名もなき北朝鮮女性Bの生き様を記録したのは、フランスと韓国を拠点に映画を製作している新鋭ユン・ジェホ監督。大胆で鋭く、ときに美しい映像で、中国と北朝鮮そして韓国に引き裂かれるBの人生を記録している。本作はカンヌ国際映画祭ACID部門に正式出品、2016年モスクワ国際映画祭、チューリッヒ国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー映画賞を受賞するなど高い評価を受けている。

【写真/蔭山勝也】

ユン・ジェホ監督

ユン・ジェホ監督

ユン・ジェホ監督

映画『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』は2017年6月10日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開!
監督:ユン・ジェホ
配給:33 BLOCKS
©Zorba Production, Su:m