満席となり、立ち見が出るほどの大盛況となった舞台挨拶。着物に身を包み登壇した満島ひかりが登壇すると、場内からは「ひかりちゃんー!」という声援が飛び、満島は「茶色い声援ありがとうございます(笑)」と笑いながら「日本で初めてお客さんの目に触れるということで緊張していますが、何かを感じて帰ってもらえれば」と挨拶した。隣に立つ永山絢斗は「奄美という島に誘われてください」とその世界観を表現した。沖縄で育ったが、生まれは奄美だという満島。撮影の合間には、祖母の弟に「コーヒー飲んでいこうよ」と誘われたことを明かた。それに対して東京生まれの永山は「お話をいただいてから小説を読んだ。実在する方を演じるのは初めて」と話し、さらに「台本が文学的で・・・。とりあえず頭だけ丸めて入りました」と振り返った。
撮影シーンになると付近に蝶々が舞うという“メルヘンな一面?”を見せた井之脇海だが「僕が蝶を寄せているのか、僕が蝶に寄せられているのか」と笑いを誘った。撮影の合間には、永山や川瀬陽太らと釣りに行ったというが、その腕前は「満島さんのほうが釣っていた」というものだったという。その様子を満島は双眼鏡で覗いていたようで「『あれはダメだね』『釣れてないね』って話してました」と笑ってコメントした。また、沖縄出身の津嘉山正種だが、方言に戸惑ったようで「言語指導を受けた」と振り返った。
本作では、満島演じるトエと、永山演じる朔中尉の出会いから朔中尉が出撃するまでの恋愛模様を描いている。さらにその後を描いた「死の棘」(島尾敏雄著)では、夫の浮気を知ったトエが正気を失う様が描かれている。満島は自身が演じたトエについて「愛に生きた方」と表現。「島ではちょっと都会的で、都会に行くと神秘的だと言われる方。彼女の居場所はずっと愛だけだったんじゃないかな」とトエの気持ちを表現し「『海辺の生と死』を読んで、私自身に同じようなところがあって、近いなって思うところがあった。いっぱい愛を注いでいるのに、男の人がふと現実を見たときに、ちょっとヒステリックになっちゃう。そういう場面は映画の中でもうっすらと感じるところがあると思います」と語った。
最後に、満島は「子どもたちから『好きな人のためにトエ先生は死ぬんですか?』って聞かれたから、『そういう話だね』って言ったら、『ダメだよ、そんな男はやめなさい』って言われてしまった(笑)永山君のことじゃないですけど(笑)」と笑いを誘いつつ「島の側から描いた(島尾)ミホさんの作品は、みんなに共通するようなおとぎ話の世界。昔のことを知っている人がいなくなっていくなかで、その方々に手を触れて、感じることができるうちに、記憶の中の世界を映画にしたいと越川監督と始めた企画です」と振り返り、さらに「綺麗ではなく美しい、怖いではなく恐ろしいものが映っていると信じています」と本作をアピールした。
小説家・島尾敏雄と妻・島尾ミホ。太平洋戦争末期に二人が出会ったのは自然と神と人とが共存し、圧倒的な生命力をたたえる奄美群島・加計呂麻島。男はじりじりと特攻艇の出撃命令を待ち、女はただどこまでも一緒にいたいと願った―。小説家である二人が後年それぞれ執筆した鮮烈な出会いと恋の物語を原作に、奄美大島、加計呂麻島でのロケーションを敢行して完全映画化した本作。島尾ミホをモデルにしたヒロイン・大平トエを満島ひかり、トエの恋人で若き日の島尾敏雄がモデルの朔中尉を永山絢斗が演じる。
映画『海辺の生と死』は2017年7月29日(土)よりテアトル新宿ほか全国で公開!
監督・脚本:越川道夫
出演:満島ひかり、永山絢斗、井之脇海、川瀬陽太、津嘉山正種
配給:フルモテルモ/スターサンズ
©2017島尾ミホ/島尾敏雄/株式会社ユマニテ