“小さな町に押し寄せた、クジラを巡る大きな衝突”を描いた本作は、2010年に公開されて東京で25週間のロングランヒットを記録したドキュメンタリー映画『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』の佐々木芽生監督による最新ドキュメンタリー。6年の制作期間をかけて、半世紀以上続く“捕鯨論争”に新たな光を当てた。和歌山県太地町は、追い込み漁を糾弾した映画『ザ・コーヴ』がアカデミー賞を受賞して以来、世界的論争に巻き込まれた。世界中の活動家たちから集中非難の的となったこの町で、カメラは賛否に縛られない多種多様な意見を捉えていく。今まさに、世界が直面している“ダイバーシティの危機”を克服するヒントを示す。
今回、フォトグラファーのヨシダナギと佐々木芽生監督による対談が行われ、その模様を収めた映像が公開された。独学で写真を学び、2009年より単身アフリカへ渡って以来、アフリカをはじめとする世界中の少数民族を撮影し発表。唯一無二の色彩と直感的な生き方が評価され、2017年には日経ビジネス誌で「次代を創る100人」に選出されたヨシダナギ。本作で描かれる捕鯨問題からヨシダナギが思い起こしたのはアフリカの「今」だったという。「グローバル化が進んでいて、アフリカの各国で裸族がいることを好ましいと思わない国が増えてきてしまっていて。政府が裸族っていうものを『なかったこと』にするというような動きが始まっていて。でも、一方では、やっぱり自分たちが長いこと続けてきた文化に恥を感じるなんてことはないっていう、民族と国とのぶつかり合いが結構起きていて」と現地の様子を見つめてきたからこそ分かる現実を明かす。
アフリカに足繁く通うヨシダナギだからこそ見える「変化」に対して、佐々木芽生も「私も、最初はクジラとイルカっていう話から本作の製作に入っていったんですけど、撮ってるうちにやっぱり捕鯨の問題じゃなくて、まさに仰ったように、グローバルとローカルの話だなって。グローバリズムって、ものすごく強引に色んな所に入ってきちゃってるじゃないですか。そこを黙ってると、簡単に飲み込まれてしまうっていうか」と語っている。
アフリカと太地町。遠く離れた二つの地域ではあるが、今そこで失われつつあるモノの共通点を見出した二人の話は「グローバリズム」をテーマに深く進んで行く。世界を舞台にする日本の女性だからこそ見える視点。「アフリカと出会ってなかったら、ずっとうちにこもっていて、何もできてなかったと思う」とまで語るヨシダ氏の、真摯な思いと情熱がたっぷり語られる対談となっている。
対談シリーズは、 本作公式サイト内にて随時更新される。
映画『おクジラさま ふたつの正義の物語』として9月9日(土)よりユーロスペースほか全国で順次公開!
監督:佐々木芽生
配給:エレファントハウス
© 「おクジラさま」プロジェクトチーム