直木賞作家・重松清の傑作原作を映画化した『幼な子われらに生まれ』の“浅野忠信がカラオケで熱唱する”本編映像が解禁された。
本作は、44歳の男が元妻、現在の妻、妻の連れ子、元妻と暮らす実娘、そして新しく産まれくる命をめぐって不器用な大人たちが成長していくヒューマンドラマ。重松清の傑作小説を、夫婦別姓、同性婚など、家族のあり方を問うと同時に、つぎはぎだらけのパッチワークのような家族の中で成長していく大人たちをリアリティあふれるタッチで、かつ優しく見守るように描いた作品。主人公・信を浅野忠信、元妻を寺島しのぶ、現在の妻を田中麗奈、さらに田中演じる妻の元夫を宮藤官九郎が演じる。

今回解禁された本編映像は、浅野忠信演じる主人公・田中信が仕事終わりにスーツ姿でひとり、カラオケに訪れるシーン。再婚した妻・奈苗(田中麗奈)との間に新たな命を授かるも「ツギハギだらけの家族に、もうひとり、新しい子供を加える必要があるんだろうか」と複雑な感情を抱きつつ、奈苗の連れ子・薫(南沙良)には嫌悪感を抱かれ、挙句の果てに「本当のお父さんに会わせてよ」と言われ親子関係はギクシャク。さらには、会社でも出向となり倉庫番勤務で現場のリーダーから嫌味を言われる始末。プライベートも仕事も上手くいかない信が、ひとりカラオケでストレスを発散する姿が描かれる。

しわのない清潔なワイシャツにネクタイを緩めることなくカラオケに没頭する信。音量を調整したり、画面の歌詞を目で追って直立で歌う姿は、田中信という生真面目な人物の性格をよく表している。歌われるのは、エレファントカシマシの『悲しみの果て』。「悲しみの果てに/何があるかなんて/俺は知らない」という歌詞は、まさに信の心情に寄り添っている。ほんの少し先の未来である“悲しみの果て”について歌っているだけなのに、真っ直ぐでストレートで力強い歌詞は、信が抱える悲しみを的確にあらわしている。

浅野は、本作について「一見この話は信が“苦難を乗り越えて、父親として変わっていく”話に思えるけど、そうではない。信が変わるのではなく、信に関わる人たちが変わっていく話だ、と僕は思ったんです」と語り、自身が演じた信を「変われない男」と捉えている。『悲しみの果て』の「涙のあとには/笑いがあるはずさ/誰かが言ってた/本当なんだろう/いつもの俺を/笑っちまうんだろう」の歌詞にあるように、悲しみの果てを越えてから、「やっぱり何も変わってないな、いつもの俺だな」と思って笑うのだ。歌そのものが感情であり、そんな歌だからこそ、聴き手の心に深く伝わっていく。誰もが抱える悲しみや怒りを、まるで代弁しているかのように田中信は存在し、『悲しみの果て』に乗せ発散させる本シーンは、今を生きる私たちへのエールでもある。

映画『幼な子われらに生まれ』は2017年8月26日(土)より全国で公開!
監督:三島有紀子
原作:重松清「幼な子われらに生まれ」(幻冬舎文庫刊)
出演:浅野忠信、田中麗奈/池田成志、南沙良、鎌田らい樹、新井美羽/宮藤官九郎、寺島しのぶ
配給:ファントム・フィルム
©2016「幼な子われらに生まれ」製作委員会