これまでの戦争映画を超えた本作で描かれるのは、相手を打ち負かす“戦い”ではなく、生き残りをかけた“撤退”の物語。容赦なく敵勢が迫るなか、浜辺に追いつめられた若き兵士を案内人に陸海空の3視点で描かれるストーリーが同時に進行する。時間描写において他と一線を画すノーラン監督ならではの緊迫のサスペンスが、IMAXカメラによる迫力の映像で映し出される。1940年5月、フランス北端の町・ダンケルクに追いつめられた英仏40万の若き兵士たち。ドイツ敵軍の攻撃が迫る中、ドーバー海峡に浮かぶすべての船を総動員した史上最大の救出作戦が決行される。
今回、本作を鑑賞した滝川クリステルより本作『ダンケルク』へ驚きと感動のコメントを寄せた。
―『ダンケルク』はいかがでしたか?
いい意味で「戦争映画」というものを覆されました。残虐な描写が多い「戦争映画」は女性にはちょっと抵抗があるので。それが戦争だとは思うのですが、なるべくそこは避けたいというのが本音です。でも、今回はそういった目を覆いたくなるようなシーンがなく、最初から最後まで、自分が戦争の追体験をさせてもらうという貴重な体験をさせてもらったという感覚です。
―どのように裏切られたましたか?
「戦争映画」を見ると、最後は重くなるというか、実際に起きたことなんだけれども、受け入れたくないものを突きつけられてモヤモヤしてしまうことが多かったのですが、今回は良い涙で終わりました。もちろん、絶望を感じさせられるところもありましたが、最後にちゃんと暖かい気持ちになって、すごく良かったです。
―これまでの「戦争映画」との違いはどこでしょうか?
民間の方が兵士を助けに行く、というところが違うと思いました。それが、この物語にとってとても大事な部分で、だからこそ監督はこの映画の題材にされたのだと思いますし、それがすごく印象に残りました。民間の方々もある意味、一人の兵士として戦争に向かい合っている。みんなが本当に戦っていたという事実を、リアルに感じました。小さな船で、何があるかわからないところに進んで行く心の強さ、タフさ。そこにすごく惹かれましたし、涙を抑えられませんでした。もちろんそこにいる兵士は、戦場で耐えるために自分を鼓舞してるんだと思います。でも、民間の方の「助けに行く」イコール「自分も一人の兵士として挑んでいる」という姿に対して改めて尊敬の念を抱きました。どこから泣いていたのか覚えていないくらい、じわじわと泣いていました。俳優たちの演技の素晴らしさ、そして無駄なことが何もないので、入り込んで登場人物の気持ちを感じ取ることができました。
―見る前はどんな予想をされていましたか?
ノーラン監督の映画は好きなんですけど、ちょっと最初分かりづらいところから始まる特殊な構成で、迷路になるじゃないですか。今回もそういう形かと思ったんですが、それも全く裏切られました。でも、彼独特の飽きさせない、興味を持ち続けさせてる構成は流石だなと思いました。
―臨場感、没入感は?
ここまで惹き込まれてしまうと抜け出せない。「戦争を感じてください」という監督のメッセージだと思います。素晴らしい技術で観客をいざなう力を持っている監督、ここまで惹き込ませる映画ってあまり無いと思います。本当に体感していると誰もが感じる。「体感できなかった」という人がいたら、理由を聞きに行きたいくらいです(笑)。「映画」というジャンルで終わってはいけないと思いました。でも、アトラクションでも無いし、そう感じても欲しくない。ちゃんと人間のドラマも感じて欲しい。だからこそ私は気持ちが動かされて、涙が止まらなかった。いい刺激を与えてもらいました。
―本作のポスタービジュアルは女性はとっつきにくいでしょうか?
確かにとっつきにくいですね(笑)。男性に感想を求めるべき映画だと思ったのですが、観終わって、女性の意見を求める理由がわかりました。女性にとって抵抗があるテーマではありますが、この映画はそういうことを一切忘れさせてくれます。そう思っていた私が馬鹿だったと、後悔させてくれる。戦争映画に必ずでてくる残酷で目を覆いたくなるような描写がないというのは驚きでした。でもそんなことも忘れさせてくれる。そんなことは関係ないというか、すべてを凌駕する世界観がすごいです!
―陸海空3つの視点から構成されるタイムサスペンスについてどう思われましたか?
秒針の効果音も革新的でした。あるようでないですよね。私は心臓の音のようにも感じました。3つの視点が入り乱れるのがすごく上手で、普通ならできないようなことがノーラン監督はできてしまうんですよね。『インセプション』の頃から「この人は人間なんだろうか?」と思っていました(笑)。普通ならばできないような、時空や次元をミックスさせる。だから飽きさせずに映画に入っていけるのだと思います。
―女性で「戦争映画はちょっと無理」という方に、本作をどう薦めますか?
この出来事があったから私たちがこうしていられる。これは男性が命をかけて築いてきてくれた歴史で、それを直視することが、私たちが生きていく上での責任なんじゃないかな、と思います。だから観て欲しい。こういうことがあったということを体験することは大事なことだと思います。
―好きな登場人物は?
マーク・ライランスが演じた、民間船の船長、ミスタードーソンです! ずっと舵を離さず、何があってもぶれずにダンケルクへ向かう。タフな心で、国を守るために行動する姿がかっこいい。男だな!と思いました。それから、小さな船で戦争へ向かうという絵を観るのは初めてで、とても新鮮だったからこそリアル感じました。民間人がどれだけの気持ちを持って40万人を助けに行ったのか。それが、監督が一番言いたかったことなのかな、と思いました。
―最後に、本作の感想をお願いします。
もっと観ていたかったです。99分で終わってしまいました(笑)。もっと観たかったし、心底もう一回観たいです。もっと映画に入っていきたいですし、そうしたらもっと違う感情が出てくるだろうな、と思いました。観終わってから周りにいた男性全員に「ダンケルクに行けますか?」と質問したのですが、皆さん「行きたくない!」と。そう思うくらいリアルで鬼気迫るものがありました。こういう史実の出来事を描いてくれる監督がいるという凄さ、リアルに歴史をきちんと表現してくれるノーラン監督の存在に感謝しています。
映画『ダンケルク』は2017年9月9日(土)より全国で公開!
監督:クリストファー・ノーラン
出演:トム・ハーディ、キリアン・マーフィ、ケネス・ブラナー、マーク・ライランス、ハリー・スタイルズ、フィオン・ホワイトヘッド
配給:ワーナー・ブラザース映画
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