第30回東京国際映画祭の特別企画として「WOWOW映画工房300回＆『君の名は。』初放送記念 新海誠オールナイト」がTOHOシネマズ六本木ヒルズで10月28日（土）に開催され、斎藤工、板谷由夏、中井圭らが登壇した。

主にカンボジアで移動映画館を開催する活動を行うNPO法人「World Theater Project」が制作する作品に、WOWOWの番組「映画工房」が協力する形で実現したクレイアニメ『映画の妖精 フィルとムー』。今回のイベントでは、冒頭で同作がワールドプレミア上映され、会場に集まった観客からは大歓声が沸き起こった。同作の上映が終わり、登壇した斎藤工は「しみじみとしました」と感慨深げに挨拶。同作の監督を務めた秦俊子は「斎藤さんの原作も素晴らしく、これまでにない素敵な作品に仕上げられた。あとは世界の子どもたちに見てもらいたい」と今後の展開に期待を寄せた。

同作は8分間のクレイアニメ。斎藤と板谷由夏が声の出演を行っているが、セリフという形ではなく音のような演じ方で、板谷は「すっごい楽しかったです。芝居に言葉はいらないんだな」と語り、斎藤も「セリフがあると字幕や吹き替えが必要ですけど、このクレイアニメには必要ない」と世界に届けることが前提に作られていることを窺わせた。また、斎藤は「僕は（初めは）全然つかめなくて、明け方のオネエみたいな声で演じた」と話し、場内からは笑いが起きた。ゴリラ役も演じたという斎藤は「このために生まれてきたんじゃないかというくらいにしっくりきた」と話し、笑いに包まれた。さらに、斎藤は「自分にとって映画って何だろうと思って（原案を考えた）。初めて観るのが『フィルとムー』になる子どもたちがいると思うので、届けるというところに力を入れていきたい」、板谷は「この作品が一つあれば縁がどんどん広がっていく可能性を秘めている」と今後の活動に意欲を見せた。

続けて、イベントでは『君の名は。』で美術監督を務めた渡邉丞、「新海誠展」で総監修を務める落合千春が登壇。斎藤は、世界中を回り、各地で『君の名は。』が話題を呼んでいることに触れ「写真のような美しさなど、美術が評価されていると思う」と評した。美術が絶賛された渡邉は、新海誠監督作品の初の長編作品となる『雲のむこう、約束の場所』から参加しているといい「（参加当初は）大学在学中だったんですけど、アニメの背景を描くバイトがあるといわれて参加した」と振り返り、それ以来14年間新海誠監督作品の美術を担当しているという。そんな渡邉にとって新海監督は「天使みたい。時には厳しい時もあるんですけど、それでもみんなが一緒に仕事をしたくなるような魅力的な人柄です」と語った。

渡邉は、自身が描くときに気を付けていることがあるといい、それは「自分がその場所に行きたいか、立っていたいか、気持ちよくいられるか」などを意識しているという。斎藤は「その思いが聖地巡礼を呼んでる」とまさに映像の世界に入り込みたくなるような美術を称賛した。また、『君の名は。』でここでしか話せないことは？と聞かれた渡邉は「瀧君の部屋の机の上にあるものを注意深く観察していただくと、とある方が出演しています。実在する人ですね」と語った。

【写真／蔭山勝也】