本作は、娼夫として生きる主人公・リョウが一人の人間として、男性として成長する姿を描くセンセーショナルな人間ドラマ。原作は2001年の直木賞候補となった石田衣良の同名小説。性の極限を描いたセンセーショナルな内容は大きな話題となり、多くの女性から共感を得た。また昨年8月には三浦大輔演出、松坂桃李主演で舞台化され、原作に忠実にセックスを真っ向からから描いた内容と松坂桃李の文字通りの体当たりの演技が話題騒然となり、チケット売り出しと同時にソールドアウト。舞台と同じ三浦×松坂のコンビで映画化した本作では、舞台とは一味違う映像表現の限界に挑戦する。
ここ数年、多彩な役に挑戦し、振り幅の広い俳優として進化し続ける松坂桃李。2009年に「侍戦隊シンケンジャー」(テレビ朝日系)で俳優デビュー、NHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」(2012)、『ツナグ』(2012)、大河ドラマ「軍師官兵衛」(2014/NHK)などで大きな注目を集めるが、その後も演じた役柄は、『日本のいちばん長い日』(2015)の青年将校・畑中健二役、『ピースオブケイク』のオカマの天ちゃん(2015)、『劇場版MOZU』の殺人鬼・権藤剛役(2015)、『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017)でペラペラなゲス男・水島真役、『パディントン2』(2018)では紳士でおっちょこちょいなクマのパディントンの吹き替え声優を務めるなど枚挙にいとまがないほど、あらゆる方向への広がりが確認できる。
そんな中、ある方向で最大限に真逆に振れたのが、「ゆとりですがなにか」(2016・2017/日本テレビ系)での童貞の小学校教師・山路一豊役と、本作『娼年』の娼夫・リョウ役だろう。実は、その対極にある役柄を演じた2作品は、撮影時期が2017年の春のスペシャルドラマ「ゆとりですがなにか純米吟醸純情編」(日本テレビ系)クランクアップから、わずか1.5日後に『娼年』の撮影が開始された。つまり、松坂は“童貞”から“娼夫”に1日半でシフトチェンジしたことになる。たった1.5日後のクランクインに驚くと、松坂は「舞台をやっていたので、リョウはすでに自分の中にあったのが大きかったです。流れも把握していましたし。だからこれだけ濃い作品に1.5日でクランクインできたのだと思います」と振り返る。舞台の感覚をとり戻すというより、「『娼年』の映画化の話を聞いた時から頭の片隅にずっとあり、モチベーション、スタンスの準備はしていました」と言う。
加えて、『娼年』ならではの切り替え術を明かした。「今回は、その1.5日の間に渋谷に移り住んだんです。環境を変えました。撮影期間中(約3週間)はずっと渋谷のビジネスホテルに住んでいました。この作品は、その日の撮影での熱量を次の日も冷まさない状態に保ちたかったのですが、家に帰ると好きなマンガやゲームがあってリフレッシュしてしまうので、半ば強制的に自分を追い込むためです。撮影場所も渋谷が多かったですし」と明かす。さらに、「自宅から通ったら、現場に行っていなかったかもしれません。撮影があまりに過酷で・・・。この作品を身近なところに置く。それが重要でした」と、撮影現場を振り返った。30代を見据え、難役もいとわず走り続ける松坂が、「ここまで精神的に追い込まれた現場は初めてかもしれません」と語っている。
映画『娼年』でどんな景色をみせてくれるのか、期待せずにはいられないエピソードだ。
映画『娼年』は2018年4月6日(金)よりTOHOシネマズ新宿ほか全国で公開!
脚本・監督:三浦大輔
原作:石田衣良「娼年」(集英社文庫刊)
出演:松坂桃李、真飛聖、冨手麻妙、猪塚健太、桜井ユキ、小柳友、馬渕英里何、荻野友里、佐々木心音、大谷麻衣、階戸瑠李、西岡德馬/江波杏子
配給:ファントム・フィルム
©石田衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会