本作で監督を務めたショーン・ベイカー監督は、全編iPhoneのみで撮影をしたり、SNSで俳優をキャスティングするなど今最も前衛的で才能溢れる監督の一人。本作では世界中の映画賞を席巻し、さらなる才能を批評家たちに知らしめたショーン・ベイカーが本作の魅力・制作秘話について語った。
今回、前監督作『タンジェリン』に続いて日本で公開されることについて「感無量です。大変嬉しい」と笑顔で挨拶したショーン監督。本作では、フロリダのキシミーに実在するモーテルを舞台としているが、その着想については「共同脚本家が新聞記事を送ってくれたのがきっかけ」と明かすショーン監督。そこに書かれていた、「世界で最も幸せと言われている場所の真横で、ホームレスになった家族が暮らしている」という事実を知ったという。
現地を訪れたショーン監督は「ディズニーが使う明るい配色やテーマを参考にしている建物ばかりが並んでいるのが特徴的で、ビジュアルに興味を持った」と振り返り、ディズニーという世界と、“隠れホームレス”との対比に衝撃を受けた様子。
主人公のムービー役を演じたブルックリン・キンバリー・プリンスについては、本作で多くの賞にノミネートされているほど高い評価を得ているが「ムーニー役が決まらなければ撮影を延期しなければいけなかった」というほど切迫した状況だったことを明かし、そこにブルックリンがオーディションを受けにきたことで「現れた瞬間に作品に出演してもらおうと決めた」と振り返るショーン監督。また、「撮影現場では感心することばかりでした」と大絶賛した。
また、観客から、本作の子役の演技から是枝裕和監督の『誰も知らない』を感じさせたという質問に、ショーン監督は「もちろん見ています。この作品を撮るまでにも見ています」と明かし、「素晴らしい子役の演技が見られる作品」と称賛した。撮影に関しては「是枝さんとは違って、脚本は渡して頭に入れてもらっています」と口頭でセリフを伝えるという是枝監督との違いを語った。ショーン監督は、本作について「いたずらや、様々なアドベンチャーに参加する気持ちで見ていただきたい」と語った。
本作の舞台は“世界で最もマジカルな場所”といわれるフロリダのディズニー・ワールドのすぐ外側にある安モーテル。眩いほど鮮やかな空、モーテルのピンクやパープル。どこを切っても写真集の1ページになりそうな世界で、その日暮らしを送るシングルマザーと6歳の娘の破天荒な生活とモーテルで暮らす人々の一夏の物語を6歳の少女の視点から描く。主人公ムーニーをフロリダ出身のブルックリン・キンバリー・プリンス、母親役をショーン・ベイカー監督がインスタグラムで発掘した演技未経験のブリア・ヴィネイト、みんなの父親的な存在である管理人ボビーをウィレム・デフォーが演じている。
【取材・写真・文/編集部】
映画『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』は2018年5月12日(土)より新宿バルト9ほか全国で公開!
監督・共同脚本・編集:ショーン・ベイカー
出演:ブルックリン・キンバリー・プリンス、ブリア・ヴィネイト、ウィレム・デフォー
配給:クロックワークス
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