本作は、ある秘密を抱えて逃れてきた青年(柳楽優弥)と、彼を偶然助けることとなった見ず知らずの初老の男・哲郎(小林薫)の物語。青年は徐々に心を開いていき、二人は何かを埋め合うように信頼関係を築いていくが、実は、哲郎にも決して忘れられない過去があった。二人の寄る辺なき魂はどこへ向かうのか―。是枝裕和監督や西川美和監督のもとで監督助手を長年務めてきた広瀬奈々子監督が、自ら書き下ろしたオリジナル脚本となる本作には、主演の柳楽優弥、小林薫のほか、堀内敬子、YOUNG DAISなどキャスト・スタッフが脚本に惚れ込み集結した。
今年のカンヌ国際映画祭で、『万引き家族』が5度目のコンペティション部門に選出された是枝監督の愛弟子である広瀬監督デビュー作に、是枝監督の代表作である『誰も知らない』で日本人初でさらにカンヌ史上最年少として主演男優賞を受賞した柳楽優弥が14年の時を経て主演するという運命も重なっている本作。さらに今年のカンヌでは、柳楽優弥が出演した映画『Duality』(邦題『どちらを選んだのかはわからないが、どちらかを選んだことははっきりしている』)が短編コンペティション部門ノミネートを果たしたことも話題となっている。
柳楽優弥 コメント
今回久しぶりに、人と人との繋がりに重きを置いた作品に参加させて頂きました。
地方での撮影中、共演者の方々と、不思議と役柄のような距離感で過ごせたこともあり、支えられた事も多かったです。
小林薫さんとは、大河から続いて一年以上ご一緒させて頂いたので、
信頼を寄せて撮影に挑む事が出来ました。
広瀬監督は、初めてお会いした時から嘘のない目をしていて、
この人について行こうと思える、とても心強い監督でした。
皆様のもとにこの作品が届くことを、楽しみにしております。
小林薫 コメント
自分の息子とは上手に向きあうことができず、事故でその息子を失っている役でした。
柳楽くん演じる青年と出会い、失った息子との時間を取り戻そうとするこれまた難しい役処でした。でも、柳楽くんとはその前にドラマで一年近くも一緒でしたので、スムーズに入れましたしやりやすかったですね。
撮影は殆ど千葉県の旭市近辺で撮りました。この辺りは豚のブランド肉が有名で、とても柔らかく超ウマのトンカツ屋があって、プロデューサーの一人は結構通ってたらしいですが、一度も誘われなかったのが心残りでしたね。
監督は女性で初監督ということでしたが、シュミレーションを何度としたのか、頭の中にしっかり出来上がったモノがあったンでしょうね。ブレずに指示していたことが印象的でした。
広瀬奈々子(監督・脚本)コメント
実質脚本に向かったのは約1年半ほどですが、震災以降の社会や権力のあり方について、
20代の間に自分の中で悶々としていたものを全てぶつけるつもりで書き始めました。若い
世代とその親世代に、それぞれの角度から観てもらえると嬉しいです。
現場は俳優とスタッフの距離が近く、常に熱気がありました。柳楽さんとは同年代ということもありお互いが納得するまで対話を重ね、小林さんには台詞の間からお芝居に関係する美術に至るまで具体的なアイディアをいただきながら撮影を進めました。
誰もが妥協せず、一つひとつのことに悩むことができたのは、新人監督としてとても幸せな経験でした。
是枝裕和(映画監督) コメント
この6年「分福」で監督助手として、是枝、西川の両作品を支えてくれた広瀬奈々子さんが満を持して映画監督デビューします。脚本は、彼女らしく、骨太で繊細な人間描写が文字の上からでも充分伝わる作品です。彼女の為なら、と、多くのスタッフが参加を表明してくれていて、恵まれたデビュー作になりそうです。僕とも西川とも違う新しい監督の誕生を大いに期待して、もうしばらくお待ちください。
西川美和(映画監督) コメント
広瀬さんには『永い言い訳』の監督助手についてもらいました。演技に対する観察眼や、映像センスはかなり鋭いものがあり、一年間じっと後ろから見られながら私は冷や汗をかき通しでした。しかし、一番の特徴は、弱い者に対しての優しさが深いところにある部分だと思います。切れ味鋭く人の孤独を描きながらも、観る人に寄り添う作品の撮れる監督になってくれると思っています。
ある日、川辺を歩いていた哲郎は、水際に倒れていた青年を見つけ、自宅で介抱する。一人やもめの哲郎の家で、彼は「シンイチ」と名乗る。やがて哲郎は自らが経営する木工所にシンイチを連れて行き、技術を教え、周囲も彼のことを受け入れていく。しかし、シンイチは本名を明かせないある秘密を抱えていた。そして、哲郎にもまた決して忘れられない過去があった。
映画『夜明け』は2019年に新宿ピカデリーほか全国で公開!
監督・脚本:広瀬奈々子
出演:柳楽優弥/YOUNG DAIS、鈴木常吉、堀内敬子/小林薫
配給:マジックアワー
©2019「夜明け」製作委員会