今回、『海よりもまだ深く』(16)に続き、7回目のカンヌ国際映画祭への参加となる是枝監督を筆頭に、同作に続き3回目となる樹木希林、是枝監督の『そして父になる』(13)以来の2回目となるリリー・フランキー、そして初参加の安藤サクラ、松岡茉優、城桧吏、佐々木みゆと7人で参加となった『万引き家族』。13日[現地時間]の公式上映の前に行われたレッドカーペット、そして日が変わって14日[現地時間]には日本メディア向けの取材が行われた。
澄み渡る夜空の下で大勢のマスコミや観客があふれる中、手をつないでレッドカーペットに登場した7人。アルマーニのタキシードでキメた是枝監督、ジョン・ローレンス・サリバンのタキシードにハットを合わせクラシカルに着こなしたリリー・フランキー、ルイ・ヴィトンのローズピンクのロングドレスに同じくルイ・ヴィトンのハイヒール、ヴァン・クリーフ&アーペルのイヤリングとリングでエレガントにその存在感を示した安藤サクラ、エトロの白いレースドレスにフランスのジュエリーブランド、ブシュロンのイヤリングとリングにジミーチュウのハイヒールで若々しく着こなした松岡茉優、和テイストのブラックコーディネートで独自のスタイルを披露し、さすがの貫禄をみせた樹木希林、アルマーニのタキシードに身を包んだ城桧吏、白のドレスをキュートに着こなした佐々木みゆ。
劇中曲である細野晴臣の心地良い音楽に合わせ、緊張する佐々木に安藤が優しく声をかける様子も見られるなど、まるで本当の家族のような雰囲気をまとい、世界から集まった観客やメディアの歓声に笑顔で応え手を振るなどしてゆっくりと会場へと進んだ。是枝監督はカンヌについて「何度来ても幸せな気分になれる。帰ってこれて嬉しい」とコメント、今作のテーマについては「社会と家族の接点を描こうと思う中で、社会性を強く出したつもりです。それもあって“万引き”という言葉がタイトルにも入っているのが、すごく印象的だなと思います」とコメントした。
続けて行われた公式上映では、2200席の会場は満席となり、万雷の拍手で迎えられた是枝監督とキャスト。日本の都会の片隅に埋まった家を舞台にした家族の物語は世界の観客の心に届いたようで、エンドクレジットから拍手が始まり、会場が明るくなると全観客総立ちで、“ブラボー!”と言う声や口笛・声援も混じり拍手喝采となった。さらに観客の中には感動で涙を浮かべる人も見られるなど、温かい空気がダイレクトに伝わったようで、是枝監督とキャストの目にも思わず光るものが浮かび、リリーは眼鏡をとり、涙を拭う姿もみられた。
是枝監督は、リリー、安藤、松岡、樹木に握手やハグ、会場を360度見渡し、キャストとともに観客全員に手を振るなど歓声に応えた。鳴り止みそうもない拍手を切り上げようと是枝監督が移動するも、拍手は続きあまりの盛り上がりについには通路で立ち止まるほど。約9分間にもわたるスタンディングオベーションに、毎回監督に帯同するスタッフからは、こんなに盛り上がって温かいスタンディングオベーションは初めてだという声もあがるなど、まさに会場が一体となってこの傑作の誕生を喜びあった。
上映を終え、日本メディア向けの囲み取材に応じた是枝監督は「出来上がって間もないので、なおしたいところはないかというのを確認しながら観てるような状況ではあるんですが(笑)」と笑いを誘いつつ、「終わった後の拍手が夜中にも関わらずあんな風に温かくそして長く頂けたので本当によかった」と手ごたえを感じている様子。また、撮影からも日が浅いことで、リリーは「今回はやっと観る側の立場として観れた気がするのですが、改めて素晴らしいと思いました」と感慨深げに語った。
今回カンヌ初参加の安藤は「カンヌの大きなスクリーンで、隣で監督と一緒に観ることにちょっと緊張しつつ、上映後は大きな拍手を頂いて、あの盛り上がり方を受けて、なんという作品に参加させてもらえたんだろうとまだその興奮が冷めていない状態です」と気持ちを語り、松岡も「観客のみなさん正装で劇場もとても大きく、大人数の中で一緒に映画を観るという体験がすごく新鮮でした」と素直な気持ちを表現した。
また、いつもは公式上映とフォトコール、記者会見が同日に行われることで時間がないという是枝監督だが、今回は別日に設定されていることで「キャストの皆と公式グッズを買ったり、会場に設置されている遊具で子供たちと遊んだりして、良い一日でした」と満喫している様子。さらに「デニムでできてるトートバックは買いました。今年は例年に比べて公式グッズのセンスがいい」と語る場面も。松岡は「公式グッズめっちゃ買いました!ノート、ボールペン、トートバック、マグカップ、ミラー、缶、Tシャツ・・・おそらく全種類ひとつずつは買わせていただいた」と初カンヌを楽しんでいる様子。
今回7度目の参加となるカンヌ国際映画祭だが、是枝監督は「自分が関わっている“映画”という仕事を、もう一度背筋を伸ばして見つめなおす場所」と同映画祭への思いと語り、安藤は「小さいときから自分の家族も映画でいつかカンヌにというのを夢みてきているので、わたしの夢とか憧れというよりももっと違う場所にある高い山で、そこにひょいと監督に連れてきてもらっちゃったという感じ」と語った。
様々な“家族のかたち”を描き続けてきた是枝裕和監督の最新作は、この10年間考えてきたことを全部込めたと語る渾身作。東京の下町で質素に暮らす家族は、生計を立てるために家族ぐるみで軽犯罪を重ねていた。犯罪でしか繋がれなかった家族の“許されない絆”が、ある事件をきっかけに衝撃の展開を迎える。万引きを重ねる父・治をリリー・フランキー、妻・信代を安藤サクラ、さらに松岡茉優、樹木希林、池松壮亮、高良健吾、池脇千鶴、柄本明、緒方直人、森口瑤子ら実力派俳優たちが集結。真の“つながり”とは何かを問う、心揺さぶる衝撃の感動作に仕上げた。
映画『万引き家族』は2018年6月8日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開!
監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:リリー・フランキー、安藤サクラ
松岡茉優、池松壮亮、城桧吏、佐々木みゆ
緒形直人、森口瑤子、山田裕貴、片山萌美/柄本明
高良健吾、池脇千鶴/樹木希林
配給:ギャガ
©2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.