本作は、韓国現代史上最大の悲劇となった光州事件を題材にし、真実を追い求めたひとりのドイツ人記者と彼を乗せたタクシー運転手の物語。軍事独裁政権の言論統制をくぐり抜け、全世界に5.18光州事件の実情を伝えた故・ウィルゲン・ヒンツペーター氏と、彼をタクシーに乗せ、光州の中心部に入った平凡な市民故・キム・サボク氏という実在の2人が肌で感じた”あの日”をコミカルかつシリアスに描く。タクシー運転手マンソプ役は、韓国映画界の名優ソン・ガンホ。ドイツ人記者ピーター役には、名作からハリウッド大作まで幅広く活躍しているドイツの誇る名優トーマス・クレッチマン。また、ユ・ヘジン、リュ・ジュンヨルが共演する。
今回、本作の題材となった《5・18光州事件》から38年を迎えた本日を記念し、本編映像が解禁された。”危険だからソウルに戻ろう”といったマンソプの言葉に耳を貸さないドイツ人記者ピーターを光州に置いたまま、マンソプは一人で留守番させている娘の元に向かう。その帰路で寄った食堂では「光州でかなりの死者が出てるそうね。市内に軍人が入ってきてまさに修羅場だって。大勢死んでるし、逮捕者もかなり出たらしいわ」という話を客に持ちかける店主の女性に対し、「そうじゃない、学生デモのせいで軍人に死傷者が出た」と反論し、またその事実がニュースや新聞でも取り上げられていると正す客の男性。その姿を真剣な顔で見つめるマンソプ。そして、手にした新聞の一面には《光州デモで軍人5名死亡》《反社会的勢力と暴徒ら》という見出しが―。
マンソプが見てきた光州の真実が、光州の外側では誤った情報で発信されていることに対する動揺だろうか、恐怖だろうか、何かを葛藤しているような複雑な表情を浮かべるマンソプ。やがて、気持ちを落ち着かせ、出されたジャンチグッス(そうめん料理)のそうめんを勢いよく啜る彼に「よほど空腹なのね、おにぎりもどうぞ」とおにぎりが提供され、神妙な面持ちのマンソプ。おにぎりの存在が示している意味とは―。
ソン・ガンホといえば、「殺人の追憶」で韓国式のジャージャー麺、「弁護人」でデジクッパ(豚スープご飯)など、歴代出演作での食事シーンが話題になっている。本作で描かれるジャンチグッス(そうめん料理)とおにぎりという食事シーンが本作のなかでどういう意味を示すのか。本編中で、一番真剣なマンソプの姿が描かれており、この食堂での出来事を機に物語の展開もガラッと変化していく大事なシーンだ。
本国では#MeToo運動の波に絡み光州事件の新たな証言が明らかになったり、ユルゲン・ヒンツペーター本人が撮影していた未公開映像をベースにしたドキュメンタリー映画『5・18 ユルゲン・ヒンツペーター ストーリー(原題)』が公開を控えていたりと、《5・18光州事件》に対する関心が再び熱くなっている。普通の人々の小さな決断と勇気が積み重なり、何かを成し遂げていく、近くで見ていなければ知り得ない当時の光州のことをマンソプのタクシーに乗りながら考えてみるきっかけになるかもしれない。
映画『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』は2018年4月21日(土)よりシネマート新宿ほか全国で公開!
監督:チャン・フン
出演:ソン・ガンホ、トーマス・クレッチマン、ユ・ヘジン、リュ・ジュンヨル
配給:クロックワークス
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