『アイネクライネナハトムジーク』が第22回上海国際映画祭コンペティション部門に出品され、6月20日に行われた上映後のQ&Aに今泉力哉監督が登壇した。
今回、日本映画でコンペティション部門(実写部門)に選出された作品は、本作『アイネクライネナハトムジーク』のみ。これまでコンペティション部門では、第6回(2002年)に岩井俊二監督作『リリイ・シュシュのすべて』が審査員特別賞と最優秀音楽賞を受賞、さらに第8回((2005年)には三原光尋監督作『村の写真集』が最優秀作品賞(金爵奨)を受賞、近年では第19回(2016年)に阪本順治監督作『団地』で主演の藤山直美が最優秀女優賞を受賞するなど、日本映画への注目度が高い。
1,000人という上海国際映画祭で最大級のキャパシティを誇るメインスクリーンの「上海影城(Shanghai Film Art Center)」は若い男女を中心に満席となる賑わいを見せ、エンドロールに入ると会場からは大きな拍手が沸き起こった。また、鑑賞中は度々笑いが起こったり、印象的なシーンでは涙を流す人も出るなど、とても暖かな雰囲気に包まれての上映となった。
上映後に今泉力哉監督が登壇、満席の会場を見て「この広い会場が満席になっているのを見てすごく嬉しいです」とコメントした。観客からの「原作は伊坂幸太郎さんの小説で、様々なエピソードが絡み合う物語。ひとつの物語にまとめるために工夫されたことはありますか?」という質問に、「最初は一人で脚本を書きますと言ったんですが、全然書けなくて。(脚本家の)鈴木さんに助けていただきながら進めていったという経緯があります。この映画もそうですが、僕一人で出来ることなんて限りがあって。色んな人が携わって出来上がっていった作品だと感じています」と明かすと、会場からは拍手が起こった。
さらにサプライズで三浦春馬から、「この作品は決して壮大ではないけれども、一人一人が確かに心に持っている“小さな愛”が溢れている映画です。誰かが誰かを想い、その想いが連鎖を起こし、生まれる小さな奇跡の連続を大事に描いた作品となっています」というコメントが読み上げられると、会場からは黄色い歓声が起こった。
また、現在日本で公開中の今泉監督作品『愛がなんだ』を挙げ、「『愛がなんだ』とはまた違うテイストの作品になっていると感じました」という観客の声に、「作品のテイストや温度は2作とも違うかもしれないですが、描いているものはどちらも“愛”についてです」という今泉監督は「『アイネクライネナハトムジーク』は家族の話もありますし、『愛がなんだ』は恋愛に寄せていたりもしますが、僕の中ではどちらもハッピーエンドであることが大切というよりは、ベストじゃなくてもこういう関係もいいよね、というのに惹かれている部分があってそれを描いています。小さな失敗とか、人間ぽい部分、人のダメさや弱さを描いているというのが、2作では共通しているところだと思っています。そして、そういうところに自分はすごく興味があります。小さい失敗をどう面白く捉えるかなど、例えば、自分でホテルでアイロンをかけたらここをちょっと焦がしちゃったんですけど・・・そういうのもありながらもそれをポジティブに捉えていく、そんなことができたらいいなと思っています」と語った。
終映後は、監督にサインをもらおうと観客が押しかけ、身動きが取れなくなる一幕もあった。授賞発表は6月23日[現地時間]に行われる。
原作は、現在に至るまでに42万部(電子書籍を除く)を売り上げる伊坂幸太郎によるベストセラー。6章の短編から成るこの原作には、登場人物それぞれに伏線が敷かれ、最終章でそれが回収されるという伊坂ならではの仕掛けがあるのだが、映画でも三浦春馬演じる佐藤という男を中心に展開していく。監督を務めるのは、緻密な構成と巧みな演出で、リアルで新しい恋愛群像を描いてきた“ダメ恋愛映画の旗手”とも称される、今注目の新鋭監督・今泉力哉。今回は、原作者の伊坂幸太郎から「映像化できるのは今泉監督しかいない!」とラブコールを受け快諾した。
映画『アイネクライネナハトムジーク』は2019年9月13日(金)より宮城県で先行公開、9月20日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開!
監督:今泉力哉
出演:三浦春馬、多部未華子、矢本悠馬、森絵梨佳、恒松祐里、萩原利久、成田瑛基、八木優希、こだまたいち、MEGUMI、柳憂怜、濱田マリ/藤原季節、中川翼、祷キララ/伊達みきお、富澤たけし、貫地谷しほり/原田泰造
配給:ギャガ
©2019 映画「アイネクライネナハトムジーク」製作委員会