10月28日(月)より開幕する第32回東京国際映画祭の「コンペティション部門」に出品される日本映画2作品が決定した。
第32回東京国際映画祭のコンペティション部門は、2019年1月以降に完成した長編映画を対象に、世界115の国や地域から応募された1,804本の中から、厳正な審査を経た作品が上映される。
今回、コンペティション部門に出品されるに日本映画として、足立紳監督による『喜劇 愛妻物語』と、手塚眞監督の『ばるぼら』の2本が決定した。『喜劇 愛妻物語』は、『百円の恋』(14)で日本アカデミー賞を初め数々の脚本賞を受賞した足立紳監督が、自身初の自伝的小説「喜劇 愛妻物語」を原作に、脚本・監督を務める。うだつのあがらない脚本家の夫と、その夫を罵倒し続けながら家計を支える妻を通して描かれる夫婦賛歌。自らをモチーフに描かれた脚本家・豪太を、数々のドラマ、映画、CMで大活躍中の濱田岳、その妻・チカをコメディからシリアスドラマまで幅広く演じる女優水川あさみがコミカルかつ熱く演じており、笑い泣き必至の“人情派夫婦活劇”を描き出している。
そして、手塚眞監督の『ばるぼら』は、手塚治虫が70年代に発表した禁断の愛とミステリー、芸術とエロス、スキャンダル、オカルティズムなど、様々なタブーに挑戦した映像化不可能とも言われた「ばるぼら」を、手塚治虫生誕90周年を記念して初映像化。監督は手塚治虫の実子であり、『白痴』(99)、『ブラックキス』(06)など独特の映画美学により国際的に評価される手塚眞。撮影監督にはウォン・カーウァイ監督作品の映像美で知られるクリストファー・ドイルを招き、世界最高水準のクオリティとなるアート・シネマに仕上がっている。
『喜劇 愛妻物語』足立紳(監督)コメント
この映画に出てくる柳田夫妻は、他人から見ればなぜ一緒に居続けるのか理解に苦しむような夫婦かもしれない。別れればいいのにと思われるかもしれない。罵り合いながら無理矢理一緒に居続けているような未熟な夫婦だ。でもそんな未熟な夫婦の無理矢理な絆というのも、もしかしたら強靭な絆なのかもしれない。夫婦という一対一の面倒くさい人間関係を諦めず、しつこく幸せになることを追い求める彼らの姿は滑稽で生命力に溢れていて、映画で描きたいと思った。そして近頃の日本の社会は未熟で不完全な人たちに不寛容すぎるから、許すことはもちろんのこと、許してもらおうとすることも大切だとこの夫婦を通して描きたかった。
『ばるぼら』手塚眞(監督)コメント
第32回東京国際映画祭に参加できることを光栄に思います。手塚治虫生誕90周年に念願の作品を映画化できたのは、まさに芸術の女神(ミューズ)が微笑んでくれた奇跡です。「ばるぼら」は手塚治虫の異色作と言われていますが、ぼくにはストライク・ゾーン。一筋縄ではいかない悪魔主義的な物語は、麗しい稲垣吾郎さんと二階堂ふみさんの身体を張った競演にクリストファー・ドイルさんの美学が絡まり合って、魅惑的な夢に変容しました。アートとエンターテインメントの境界を揺らぎつつ、その融合を目指した映画です。耽美的な愛と狂気の寓話をどうぞ味わってください。
矢田部吉彦(東京国際映画祭プログラミング・ディレクター)コメント
―選定理由について
『ばるぼら』は手塚眞監督が父・手塚治虫の原作を現代に映画で蘇らせ、稲垣吾郎と二階堂ふみという強力な俳優たちの姿をクリストファー・ドイルのキャメラで鮮烈に切り取るという、様々な点で非常に贅沢で幸福な作品である。耽美で幻想的、魔術的でエロティックな世界観の独創性が、近年の邦画において際立っている。手塚監督の到達点とも呼べる作品であり、コンペへの招聘が祝福となることを期待したい。『喜劇・愛妻物語』は足立紳監督の2作目であるが、脚本家として積み上げたキャリアを自虐すれすれのところで笑いに昇華させる技術に感服し、そして水川あさみと濱田岳のコンビからキャリアハイのド迫力演技を引き出した演出に敬意を表したい。シリアスな作品が多いコンペの中で台風の目となりうるコメディであると信じている。
『喜劇 愛妻物語』
監督:足立紳
出演:濱田岳、水川あさみ、新津ちせ
配給:バンダイナムコアーツ/キューテック
『ばるぼら』
監督:手塚眞
出演:稲垣吾郎、二階堂ふみ、渋川清彦、石橋静河
「第32回東京国際映画祭」は2019年10月28日(月)~11月5日(火)に六本木ヒルズ、EXシアター六本木、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場ほかで開催!