『リチャード・ジュエル』のワールドプレミアが11月20日[現地時間]に米国ロサンゼルスのTCL・チャイニーズ・シアターで行われ、クリント・イーストウッド監督らが登壇した。

ひょうが降るほどの荒天の中、各国からの取材陣と、公開を楽しみにする多くのファンの前に登場したのは、監督・製作を務めたクリント・イーストウッド、リチャード・ジュエル役のポール・ウォルター・ハウザー、ワトソン・ブライアント役のサム・ロックウェル、トム・ショー役のジョン・ハム、ジュエルの母ボビー役のキャシー・ベイツら豪華キャストたち。

ポップコーンを頬張るおちゃめな場面もあった御年89歳の巨匠クリント・イーストウッドは、本作でリチャード・ジュエルという人物を題材にしたことについて「ジュエルは、ひどい悲劇の犠牲者だったからだよ。彼は、『疑わしきは罰せず』という扱いを受けなかった。彼は、適切な調査をされずに(犯人だと)判断されたんだ。それは、憲法に反することだし、僕らが信じているすべてのことに反している」とコメント。さらに今この作品を公開する理由については「今世界で起きているのととても似たことだからだよ。人々は、ちゃんと確認する前に、早まった判断をするんだ」と、この時代だからこそ伝えたいテーマを語った。そして、日本のファンにメッセージを求められると「お会いできてうれしいよ。ビバ・ジャパン!」笑顔を見せた。

にこやかにコメントに応じたポール・ウォルター・ハウザーは、本作について「僕はこの映画が大好きだよ。僕にとってものすごく大切なものだ。クリントと仕事をするのは喜びだったし、とても奥行きのあるキャラクターや意義のあるストーリーを語るのは喜びだった」と、イーストウッドとの仕事はもちろん、リチャード・ジュエルを演じることは、自身の中で大きな経験だったと語る。そしていよいよ作品がお披露目される事には「僕は多くの観客がこの作品を楽しんでくれることにとても興奮している。人々は一礼して(映画館を)後にするよ。そして自身、それか誰か知っている人をリチャード・ジュエルの中に見出すんだ。(今ここに)リチャードが僕らと一緒にいて、僕らと一緒に祝うことが出来たらよかった。彼の魂はここにいるよ。そして、彼の母親がここにいる」と、なんとリチャード・ジュエルの母ボビー・ジュエル本人も、このレッドカーペットへの登壇が実現したことを明かした。

さらに、作品と今の社会の関連について「残念なことに、この映画はいつも今日的な意味を帯びている。僕らが同じ間違いを犯し続けている限りは、歴史は繰り返されるんだ。FBIのようなグループの人々は、もっとちゃんとわかっているべきだ。リチャード・ジュエルは、88日間も捜査をして何も見つからなかったうえに、彼の人生を台なしにしたんだ。この映画はそれを明らかにすると思う。歴史と真実に光を当てているんだ。だから僕らは今夜ここにいるんだ。リチャード・ジュエルを称賛し、彼のストーリーを語るためにね」と強くメッセージを送った。

1996年、警備員のリチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)は米アトランタのセンテニアル公園で不審なリュックを発見。その中身は、無数の釘が仕込まれたパイプ爆弾だった。テロを未然に防ぎ一時は英雄視された彼だが、現地の新聞社とテレビ局がジュエルを容疑者であるかのように書き立て、実名報道したことで状況は一変。さらに、FBIの徹底的な捜査、メディアによる連日の過熱報道により、ジュエルの人格は全国民の目前でおとしめられていった。そこへ異を唱えるため弁護士(サム・ロックウェル)が立ち上がる。そして、ジュエルの母(キャシー・ベイツ)も息子の無実を訴え続けるが、3人の前に立ちはだかるのは、およそ3億人の人口をかかえるアメリカの巨大組織、政府とマスコミだった―。

映画『リチャード・ジュエル』は2020年1月17日(金)より全国で公開!
監督・製作:クリント・イーストウッド
出演:サム・ロックウェル、キャシー・ベイツ、ポール・ウォルター・ハウザー、オリビア・ワイルド、ジョン・ハム
© 2019 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC