実話を元に描かれた霧の街の七つの記憶の物語『モルエラニの霧の中』の予告編とポスタービジュアルが解禁された。

本作は実話を元に、その場所で、時にはエピソードに登場する本人も出演しながら撮影された<街の自画像>のような映画。移り変わる時代の中、地方都市に生きる人々の姿が、優しく慈しむような眼差しで紡がれていく。「ここに生きる人々の息づかいを映画に残したい。そして、この街を知ってほしい」との監督の強い願いに、街の人たちが結集して映画が製作された。タイトルの“モルエラニ”とは、北海道の先住民族であるアイヌの言葉。[小さな坂道をおりた所]という意味で、「室蘭」の語源のひとつと言われる。

監督・脚本・音楽を務めたのは、2011年に東京から北海道室蘭市へ移住した映画作家、坪川拓史。街で出会った人々から聞いたエピソードを元に七話連作形式”の脚本を執筆。2014年、市民有志が映画製作応援団を結成し、資金を集め始め、同年、クランクイン。度重なる撮影中断を乗り越え、2018年10月に全編の撮影が終了した。映画製作には街の人々(のべ1000人)が協力し、5年の年月を経て純度100%の室蘭発の映画として完成を果たした。

メインキャストには、2018年に急逝した大杉漣、香川京子、小松政夫、大塚寧々、水橋研二、菜葉菜、中島広稀、
草野康太、久保田紗友、そして独演劇が国内外で高い評価を得る坂本長利など、演技派で多彩な俳優陣が揃った。そのほか、キャストの半数がオーディションで選ばれたり、街で監督にスカウトされた演技経験の全く無い人々も出演している。

室蘭の印象的なロケーションのなかで撮影され、美しい風景が映し出されているが、過ぎ去る年月のなかですでに壊された建物も多いという。坪川監督が撮影当時を振り返り、大杉が室蘭を離れる日にスタッフたちに向けて「映画づくりは同じ船にみんなで乗ること。モルエラニ号という船の乗組員になれて嬉しい。この映画もきっといつかすてきな港に着くと思う」と話してくれたことを明かした。

今回解禁された予告編では七つの章の印象深いシーンが切り取られている。「失われていく街の記憶」を紡ぐように、また前を向いて歩いていこうという決意のように、各章の人物たちの後ろ姿の映像がとても印象的だ。そして、予告編全編に流れる歌「静かな空」は、シンガーソングライターの穂高亜希子が歌う楽曲。監督自身、以前より交流があった彼女の歌に惚れ込み、いつかこの歌を効果的に使う映画を撮りたいと思わせた歌。透き通った涼やかで優しい声が予告編のポイントになっている。

予告編

映画『モルエラニの霧の中』は2020年3月21日(土)より岩波ホールほか全国で順次公開!
監督・脚本・音楽:坪川拓史
出演:大杉漣、大塚寧々、水橋研二、菜葉菜、菅田俊、草野康太、久保田紗友、小松政夫、坂本長利、香川京子
©室蘭映画製作応援団2020