“尾道三部作”が世代を超えて親しまれ、昨年11月には文化功労者に選ばれた映画作家の大林宣彦さんが、肺がんのため東京都世田谷区の自宅で4月10日19時23分に82歳で亡くなった。
葬儀・告別式は、家族葬(密葬)を執り行い、後日、お別れの会が予定されている。喪主は、妻で映画プロデューサーの大林恭子氏が務める。
大林宣彦さんは、1938年広島県尾道市生まれで、3歳の時に自宅の納戸で見つけた活動写真機と戯れるうちに映画をつくり始める。テレビCM草創期にはチャールズ・ブロンソンの「マンダム」をはじめ、カトリーヌ・ドヌーヴなど多くの外国人スターを起用し、CM作品数は3000本を超える。1977年に『HOUSE/ハウス』で商業映画に進出し、自身の古里・尾道を舞台にした『転校生』(82)、『時をかける少女』(83)、『さびしんぼう』(85)は“尾道三部作”と称されて世代を超え親しまれ、今も新世代のクリエイターへ大きな影響を与えつづけている。
近年には、“大林的戦争三部作”となる『この空の花-長岡花火物語』(11)、『野のなななのか』(14)、『花筐/HANAGATAMI』(17)を発表。『花筐/HANAGATAMI』は第72回毎日映画コンクール日本映画大賞、第33回高崎映画祭特別大賞など様々な賞を受賞し、第91回キネマ旬報ベスト・テンでは日本映画ベスト・テン第2位に選ばれ、監督賞を受賞した。大林宣彦監督個人では、2004年春の紫綬褒章受章、2009年秋の旭日小綬章受章。2019年、令和初の文化功労者に選ばれている。
また、昨年行われた第32回東京国際映画祭では、永年の国内外を含めた映画界への貢献が目覚ましい方々へ贈る“特別功労賞”が大林さんに贈られ、同映画祭において「映像の魔術師 大林宣彦」と題し、最新作『海辺の映画館―キネマの玉手箱』のワールドプレミア上映を含む5作品が上映された。
肺がんと診断され、余命の宣告を受けたのは、2016年8月。転移を繰り返すがんと闘いながら、みずからの命を削って、平和をたぐり寄せる映画を完成させた大林宣彦監督の最新作『海辺の映画館―キネマの玉手箱』は、4月10日(金)に公開を予定していたが、新型コロナウィルスの影響により公開が延期となっている。
『海辺の映画館―キネマの玉手箱』は、近日公開を予定している。
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