戦地シリアの今をある女性の視点で描く生き残るための24時間の密室劇『Insyriated(原題)/In Syria(英題)』が『シリアにて』の邦題で8月22日(土)より公開されることが決定し、合わせてポスタービジュアルと予告編が解禁された。
本作は、戦地シリアを舞台に自らの住むアパートの一室をシェルターにし、身を寄せる家族と隣人一家の緊迫の24時間を描いた密室劇。三児の母であるオームは、自らが住むアパートの一室をシェルターにして、家族と隣人ハリマの一家を市街戦の脅威から守っている。一歩外に出ればスナイパーに狙われ、爆撃が建物を振動させ、さらに強盗が押し入ろうとする。果たしていつまで持ちこたえられるだろうか・・・。第72回カンヌ国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した映画『娘は戦場で生まれた』で世界の注目を集めた、未だ解決をみない戦地シリアの24時間を、舞台をアパートの一室に限定し、武器を一切持たない一般市民の女性の視点で捉えた緊迫のフィクション・ドラマ。
暴力を視覚化した衝撃描写であおる手法は避け、聴こえてくる音と住人の反応によって恐怖を伝える演出は、戦地に実際に立ち会っているかのような究極の臨場感を醸し出す。戦争や兵器の映像を出さずとも、住人の心理的描写のみで、血も凍るような緊迫したサスペンス性を獲得した本作は、現在進行形のシリアの悲劇を世界に伝える役割を果たし、第67回ベルリン国際映画祭で見事、観客賞を受賞。その後も数々の映画祭を席巻し18冠を獲得。今こそ世界に伝えたい、終わらない悲劇の物語。
監督・脚本を務めるのは、ベルギーの社会派監督フィリップ・ヴァン・レウ。ルワンダ紛争での大量虐殺を描いたデビュー作『The Day God Walked Away』(09)に続く長編映画となる本作は、2012年に友人の父親が、シリア北部の都市アレッポの住居から3週間出られずにいたという話を聞いたことから、危機感を募らせ早急に映画化。脚本の信憑性を増すため、シリア難民やシリア系の映画人による検証を重ね、現地の緊迫した家族の物語を、リアルに描き出す。
圧倒的な存在感、凛とした立ち居振る舞いで、死と隣り合わせの日常におびえる家族を強く導く女性主人を演じるのは、イスラエル生まれのパレスチナ人として知られる名女優ヒアム・アッバス。『シリアの花嫁』(04)、『ガザの美容室』(18)などの多数のイスラエル、パレスチナにまつわる映画に出演しつつ、『ミュンヘン』(05)、『ブレードランナー2049』(17)などのハリウッド映画まで世界的に活躍している。隣人ハリマ役は、『判決、ふたつの希望』(18)で、父親に敵対する弁護士役を熱演し賞賛を浴びたディアマンド・アブ・アブード。ヒアム・アッバスに勝るとも劣らない迫真の演技で、カイロ国際映画祭では主演女優賞を獲得した。
ストーリー
シリアの首都ダマスカスのアパートに住む女主人のオーム。未だ内戦の終息は見えず、アサド政権と反体制派、そしてISの対立が続いていたが、ロシアの軍事介入により、アサド政権が力を回復しつつある。そんな中、戦地に赴いた夫の留守を預かるオームは、家族と共にアパートの一室にこもり、そこに身を寄せた隣人で、幼子を持つハリマ夫婦とともに、何とか生活を続けている。ある日、ハリマの夫がレバノンの首都ベイルートに脱出するルートを見つけ、今夜こそ逃げようとハリマに計画を話していた。脱出する手続きをするために、夫はアパートを出て行くが、外に出た途端スナイパーに撃たれ、駐車場の端で倒れてしまう。一部始終を目撃していたメイドのデルハンは慌ててオームに知らせるが、外に出るのはあまりにも危険である。助けに行くことはできない。デルハンはハリマに夫が撃たれたことを伝えようとするが、オームは彼女が狙撃されることを恐れて、デルハンを押しとどめる。ハリマにはまだ生まれたばかりの赤ん坊がいる。彼女を守るためにオームは苦渋の選択をするのだが・・・。
映画『シリアにて』は2020年8月22日(土)より岩波ホールほか全国で順次公開!
監督・脚本:フィリップ・ヴァン・レウ
出演:ヒアム・アッバス、ディアマンド・アブ・アブード、ジョリエット・ナウィス、モーセン・アッバス、モスタファ・アルカール、アリッサル・カガデュ、ニナル・ハラビ、ムハマッド・ジハド・セレイク
配給:ブロードウェイ
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