『人数の町』の大当たり祈願が8月24日(月)に都内で行われ、中村倫也、石橋静河が登壇、その後行われた完成記念会見には2人に加えて荒木伸二監督が登壇した。

日本橋福徳神社で行われた大当たり祈願に浴衣姿で登場した中村と石橋。シックなカラーの浴衣姿の中村は「数年ぶりの浴衣です。腹の座りがどこだかわからなくてちょっとそわそわしています」、爽やかな藤色にもみじをあしらった浴衣で登場した石橋は「昨年の撮影で着て以来です」と笑みを浮かべた。祈祷の感想について中村は「僕の邪念が全てふり払われましたので、今日はつるんとしたコメントしか出なそうです(笑)」と挨拶し、会場の笑いを誘った。石橋は「楽しかったです」と笑顔を見せたが中村が「どんな場所にありましたか?」と石橋からたくさんのコメントを引き出そうと質問。「ビルに囲まれた神社だったけれど、昔ながらの雰囲気の良い場所でした」と付け加え、コンビネーションの良さを見せていた。

主人公・蒼山哲也役を演じた中村は「特徴もなく、流されるままに生きてきた男」と解説。続けて「主義がない男だけど、石橋さん演じるヒロイン・木村紅子やさまざまな人と出会うことで変わってどうかわっていくのかが見どころです」と述べた。対して紅子は明確な意思を持っているキャラクター。演じた石橋は「その頑固さで、“町”に馴染めずに、どこかおかしいよということを必死に訴えています。そのあとは・・・ね(笑)」とネタバレにならないようにキャラクター説明をしなければならない状況に、複雑な表情を浮かべる場面もあった。

映画が完成したことについて、荒木監督は「たった一人で孤独に脚本を書き始めるところから始まりました。それが今、日本で最高レベルのお二方に演じてもらうことで立体化したことに感動しています。撮影中は、リハーサルの段階から、うれしくて涙が溢れそうになるのを必死に抑えて、ベテラン監督のように堂々と振る舞うように心がけていました」とコメントしたが、中村が「堂々とした印象はなかったです」と暴露する場面もあった。

舞台となる“町”は、ちょっとした労働のようなことをやれば衣食住が保証されるという不思議な場所の印象について、中村は「場所、空間、表情、言葉遣いなど、ひとつひとつがなんか異様でしたし、違和感はぬぐえませんでした。でも考え方を変えて、頭を切り替えれば居心地が良かったりするのかなという感覚でいました」と振り返り、石橋は「紅子は町に入って行く側の人。ひたすら怖いし、気持ち悪いし、不気味で嫌な場所だと思っていました」とコメントした。

初共演の印象について中村は「初めてとは思えないくらいの信頼感と安心感がありました」としながらも「僕が一方的に思っているだけかもしれないけど」と付け加え「現場でも仕事の話はせずに僕がずっと喋っているところに、石橋さんがツッコミを入れ、それにまた乗っかって・・・そしてだんだん無視されます」とコメント、さらに「でも、無視されると仲良くなったと思えるタイプなので大丈夫です(笑)」と語った。

この日行われた“大当たり祈願”に絡めて、人生の大当たりについて聞かれた中村は「小学校のときに懸賞で当たったE賞」と大当たりではないエピソードを披露。それには理由があり「大人になると、子どもの頃の残念な話が回収できて、当たったなって思えるのがいい」と解説。すると、石橋も「私は小学生の学芸会で、一番やりたくなかった豚のお母さん役をやったことです。今こうして話せるので大当たりなのかもだけど、すごくショックでしたね。早く終わらないかなと思いながら演じていたのを覚えています」と振り返った。

注目してほしいポイントについて、中村は「石橋さんの・・・」としばらくためてから「瞳です」とアピール。その理由は「本当にキレイな瞳なんです。こんなに光が集まる眼球僕、持ってないですもん」と独特の表現で石橋の瞳の美しさを解説。続けて「紅子の登場で物語が動き、青山も揺さぶられて行く。それが成長なのかどうかわからないけれど、変わるきっかけとなる紅子の登場は見どころですね」と強調した。石橋は大きな意味があるシーンではないと前置きしながら「逃避行して海辺でけだるそうに過ごす2人のシーンがすごく好きです」と告白。「2人が大変な生活をしている様子がよくわかるシーンです」と説明した。

最後に石橋は「おもしろい作品になっているので、映画館に足を運んで観ていただければうれしいです」、中村は「映画を観た方の反応が楽しみな作品なので、早く皆さんの感想が聞きたいです」と本作をアピールした。

本作は、衣食住が保証され、セックスで快楽を貪る毎日を送ることができ、出入りも自由だが、決して離れることはできない、という謎の“町”を舞台に、借金で首の回らなくなった蒼山(中村倫也)が、その“町”の住人となり、そこで出会う人々との交流を経て“町”の謎に迫っていく新感覚のディストピア・ミステリー。2017年に発表された第1回木下グループ新人監督賞で、241本の中から準グランプリに選ばれた。主演に中村倫也を迎え、石橋静河、立花恵理、山中聡などフレッシュな面々が顔を揃える。監督・脚本は荒木伸二が初の長編映画に挑戦する。

映画『人数の町』は2020年9月4日(金)より新宿武蔵野館ほか全国で公開!
出演:中村倫也、石橋静河、立花恵理、橋野純平、植村宏司、菅野莉央、松浦祐也、草野イニ、川村紗也、柳英里紗/山中聡
配給:キノフィルムズ
©2020「人数の町」製作委員会