作家ジャック・ロンドンの自伝的小説をイタリアを舞台に映画化した『マーティン・エデン』の場面写真が解禁され、併せて各界の著名人からコメントが到着した。
労働者階級出身ながら若き日の破天荒な生活を経て大作家になるというアメリカン・ドリームの体現者である作家ジャック・ロンドンの自伝的小説を、魂を揺さぶる感動巨編に昇華した本作。貧しい船乗りの青年マーティンは、上流階級の娘エレナと出会い恋に落ち、文学に目覚める。激動の時代、労働者地区に生まれ育った無学の青年は、運命の出会いに導かれて文学にのめり込んでいくが、生活は困窮し恋人の理解も得られない。絶望にかられてすべてを諦めようとした矢先、彼の運命は一変する。果たして彼を待ち受けるのは希望か、絶望か――。主人公を全身全霊で演じたルカ・マリネッリは本作でヴェネチア国際映画祭男優賞に輝いた。『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』(17)での怪演も記憶に新しく、Netflix映画『オールド・ガード』ではシャーリーズ・セロン率いる特殊部隊の一員を演じる。
イタリア映画界を牽引する俊英監督&演技派俳優がジャック・ロンドンの自伝的小説を完全映画化した本作。今回、“いまこそ見直されるべき”名作の実写化に、著名人からのコメントが到着した。
奥田瑛二(俳優・映画監督)
我々はいつも時代に翻弄される。
人は何を求め生きているのだろうか?それは人それぞれ、さまざまである。
全てに諦めることなく貫き生きる。だが理想という幻は心を喪失させる。
生きることの意味…それは自身との戦いである。
この映画は自分を振り返る大河である。
小島秀夫(ゲームクリエイター)
20世紀も21世紀も、格差社会である事に変わりはない。そんな中で後ろ盾もなく、さらに独学で作家として大成するのは奇跡だと言える。本作は20世紀初めに発表された、ジャック・ロンドンの自伝的長編を元にしている。アメリカからイタリアへと舞台を移してはいるが、何処であろうと、いつであろうと構わない。夢と現実の狭間で葛藤し、もがいている世界中の若者たちに、共感と絶望の美しさを与えるはずだ。
柴田元幸(アメリカ文学研究者/翻訳者)
イタリア映画ならではの非常に美しい緑色が、原作とはまったく違った要素として世界を包んでいる。原作にはない並々ならぬ緊張感が、『マーティン・エデン』を独自の素晴らしさを持つ作品にしている。
新元良一(作家)
恋をし夢を抱き、ひたむきだからこそ、若者は傷つく。挫折と失望の荒波を乗り越え、その向こうへと泳ごうとする主人公の姿は、青春のきらめきそのもの。波が高ければ高いほど、われわれの心できらめきは永遠の輝きを放つ。
立田敦子(映画ジャーナリスト)
愛や成功を葬り去っても、苦悩と向き合い信念に殉じた、マーティン・エデンの生き様に打ちのめされた。悲劇的ではあるが、その強さは勇気をくれる。スーパー16mmのフィルムの圧倒的な映像美でスクリーンに蘇ったこの武骨な20世紀の物語は、魂が揺らいでいる2020年のいまこそ見直されるべき。
佐藤久理子(文化ジャーナリスト)
たとえ地平の果てに絶望しかないとしても、運命に抗い、進み続ける。
限りない情熱に駆られた若き作家の咆哮に、魂が震える。
西村賢太(小説家)
単なる成功者の軌跡を辿った映画でないことを願った。小説に生涯を賭した一人の人間の物語を期待した。結果、小説を書くその行為で、良くも悪くも“人生を棒に振った”男の姿が忘れられなくなった——
岸本佐知子(翻訳家)
黙って立っているだけで何かを語りかけてくるルカ・マリネッリの圧倒的な肉体の存在感に、目が釘付けの二時間でした。
ヴィヴィアン佐藤(ドラァグクイーン/美術家)
良い意味で分断化された、個々の価値観や時間を持つ「大陸」というイメージの欧州。その復権を見逃してはならない。ルカ・マリネッリの生粋の欧州人の存在感が素晴らしい。
青野賢一(ビームス創造研究所クリエイティブディレクター/ライター)
貧しく学もないマーティンが懸命に本を読み、テキストを書くことで掴んだ成功。それとは裏腹に空虚さを増してゆく心――。フィクションとドキュメンタリーを行き来するような独特の映像表現で紡ぐ詩情豊かな作品だ。
杉谷伸子(映画ライター)
ネオレアリズモな泥臭さから、ヴィスコンティ的な退廃まで。イタリア映画史をも映し出すかのようなマーティン・エデンの変貌を鮮やかに体現するルカ・マリネッリ。その才能と男の色気が、「生きること」を凝視させる。
小林竜樹(俳優)
目だ!ルカ・マリネッリが圧倒的な目で、僕らの中にいるマーティン・エデンを呼び覚ましてくれる!圧巻の終盤、頬を伝うものを拭いながら、ラストシーンの情景にランボーの詩を思い出した。たくさんを手にいれて、たくさんを失った。絶望の淵に立ったマーティンは、あの“海と溶け合う太陽”に永遠を見たのだろうか。
映画『マーティン・エデン』は2020年9月18日(金)よりシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国で順次公開!
監督・脚本:ピエトロ・マルチェッロ
出演:ルカ・マリネッリ、ジェシカ・クレッシー、デニーズ・サルディスコ、ヴィンチェンツォ・ネモラート、カルロ・チェッキ
配給:ミモザフィルムズ
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