『ホテルローヤル』の北海道凱旋報告会が札幌市内で行われ、波瑠、安田顕、原作者の桜木紫乃が登壇、武正晴監督がリモートで参加した。
2019年5月~6月に北海道の札幌と釧路で全編撮影が行われた本作。撮影から1年以上が経ち、北海道の地で再び顔を合わせた。波瑠は「最近は皆さんの前に立って挨拶をさせていただくことが減ってしまってすごく寂しいなと感じていましたが、今日は皆さんの前でお話しすることができて嬉しいです」、安田は「北海道を舞台にした物語で、北海道で撮影された作品に、北海道出身の私がこうやって参加できることを本当に嬉しく思います」とその思いを語った。
波瑠はオファーを受けた時のことを「7年前に直木賞を受賞された時にすぐに買って読みました。映画化するというお話をいただいた時に、印象に残っていた作品なので、すぐに『ありがとうございます。受けさせていただきます』と返事をしました。台本を読んでみると、雅代は主人公ですが、物語の色々な出来事を端っこで眺めているような、主張がなかなか見えてこない女性。台詞も『・・・・・・』が多く、ただ立っているだけになるのではという不安もありましたが、雅代とホテルローヤルの物語の中に一つ一つ普遍的にあるものを見つけられたらと思いながら挑みました」と語り、原作への思いと役作りについて振り返った。
前々から桜木のラブコールを受けていたという安田は「随分前から桜木さんに『もし私の作品が映画化することがあったらぜひ出てくだいね』とありがたい言葉をいただいていたんです。俳優としてこの作品に呼んでいただいて、本当にありがたく思っています」と出演理由を明かした。映画を観て「映画という表現に書き手の内面を素っ裸にされたような気持ちになった。脱がせたつもりが脱がされていたー」とコメントをした桜木は「悔しかったんです」と振り返り、武監督は「桜木さんの作品を片っ端から読んで、全てを取り入れました!」と桜木のあらゆる文章からヒントを得ていたことを明かし、「原作のオムニバスは非常に映画的な題材だと思いました。素晴らしい原作のエッセンスをできるだけ損なわないようにシナリオにするのが難しかったです。北海道で撮影するというのが目的でもありました。それが映画の大きな力となりました」と映画化にあたり意識した点、そして北海道で撮影することの意義を語った。
最後に、波瑠は「私が演じた雅代は自分の生まれた環境に疑問を持っていて、それと同時に嫌悪感みたいなものも抱いていて、ものすごく葛藤した思春期を送っています。結果的に親の後を継ぎホテルの女将になっていきますが、自分の置かれている状況にうんざりしています。さらにはその状況を変えることもしない自分に一番うんざりしていているんです。そのような一人の女の子が初めて自分の人生を肯定して、自分の足で歩み、自分の色で人生を彩って生きていきたいと思う瞬間がこの作品にはあると思っています。観てくれた人の背中をそっと押してくれる作品になっています」、安田は「切ないんだけど、じわっと温かい涙が出てくるんです。余貴美子さんと斎藤歩さん夫婦や、内田慈さんと正名僕蔵さん夫婦のシーンなど、切なくてでも温かくてとてもいいんです。このような状況の中で、北海道を舞台にした作品を上映できること心から嬉しいです。北海道の人には、ぜひ観てほしいです」と本作をアピール。
桜木は「私は無意識に書いていたけれども、映画を観て改めて、積極的に逃げるということは、とても前向きなことなんだなと教えられました。北海道から出発する物語。前向きに歩いていきたいと思える作品です」、武監督は「30年のホテルの物語です。映像というのは、『1スジ、2ヌケ、3ドウサ』という教えがありますが、桜木さんの原作があって、北海道という風景があって、素晴らしい俳優が揃いました。こういう映画ができて本当に幸せです」とメッセージを送った。
北海道の湿原に立つラブホテルを舞台に、現在から過去へ時間軸を遡り、ホテルの盛衰とそこを訪れる人々の生と性を、切なくも瑞々しいタッチで描いた七編からなる連作小説、桜木紫乃の代表作「ホテルローヤル」を映画化した本作。映画では、原作の持つ静謐な魅力をそのままに、閉塞感のある日常を離れ、ホテルローヤルの扉をひらく男と女、問題を抱える経営者家族・従業員のそれぞれの人生模様をホテルの経営者家族の一人娘・雅代を主軸として繊細に綴られる。メガホンをとるのは武正晴監督。原作者の桜木自身を投影したとされる主人公・雅代を演じるのは波瑠。
映画『ホテルローヤル』は2020年11月13日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開!
監督:武正晴
出演:波瑠、松山ケンイチ、余貴美子、原扶貴子、伊藤沙莉、岡山天音、正名僕蔵、内田慈、冨手麻妙、丞威、稲葉友、斎藤歩、友近/夏川結衣、安田顕
配給:ファントム・フィルム
©桜木紫乃/集英社 ©2020映画「ホテルローヤル」製作委員会