第33回東京国際映画祭「TOKYOプレミア2020」部門上映作品『佐々木、イン、マイマイン』のQ&Aイベントが11月5日(木)にTOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、内山拓也監督、藤原季節、細川岳が登壇した。
ワールド・プレミアやアジアン・プレミアの作品を中心に、32本の内外の個性豊かな監督による新作の披露を観客と共に祝福する「TOKYOプレミア2020」部門。主演の藤原季節をはじめ、細川岳、萩原みのり、遊屋慎太郎、森優作、小西桜子、河合優実、井口理(King Gnu)、鈴木卓爾など2020年代の映画界を担う期待の新星から実力派俳優まで、幅広いキャストが顔を揃える本作。カリスマ的存在だった高校生とその仲間たちのドラマを通して、青春時代特有のきらめきと、もう戻らない日々への哀愁をストレートに描き出す。本作のストーリーは、俳優・細川岳の高校の同級生=佐々木とのエピソードが原案。細川が自身の出演作「ヴァニタス」を監督した内山拓也監督に映画化を持ちかけたところからプロジェクトが始まった。
この作品が完成して、実際に上映されるという今の心境を聞かれると、細川は「感想をいただいたときに、誰かの背中を押すことができたんだと感じました。ちょっとまだふわふわしていて、どう感じていいのかも分かっていないんですけど、ただ嬉しいことには間違い無いです。」とコメント。
また、内山監督は「岳の話を通して自分の経験や感情を呼び覚まされました。細川岳の話ではなく、映画『佐々木、イン、マイマイン』というものを新しく撮るということだけは明確にして、それだけは忘れないように撮りました。」と本作における監督としての立場を語った。
また、劇中歌の選択について問われると「どう仕上げるかという段階で、エンドロールはどのように終わらせるかを結構考えたのですが、一番僕の中でクリティカルに響くものを考えた時に、中島みゆきの『化粧』の“流れるな涙、心に止まれ”という歌詞はこの映画らしいと思って。映画らしいというものを貫いて作ってきたので、ラストもかっこ悪くいようと思ってこの曲を選択しました。」と答えた。
観客からは、劇中で多く登場する”タバコ”の意味についての質問が寄せられ、監督は「ほとんどのシーンで明確に台本に書いてある通りにタバコを吸っています。誰が何を吸うかもきちんと決めました。」と話した。さらに、「昔の映画に多くあるように、映画にタバコが出てくる、“あの感覚“は映画体験らしいと思っていて。日本の映画における規制が多くなる中で、たとえ規制されてもタバコは入れたいと言い続けたい。」と映画におけるタバコへのこだわりを語った。
また、藤原もこれについて「唯一アドリブで僕が勝手にタバコに火をつけたのがこのポスターのシーンなんですけど、何も考えずに火をつけたんです。僕の記憶ではこの部屋には僕と佐々木の2人きりだという確固たる気持ちだけはあって。」と撮影を振り返った。また、このシーンについて細川は「僕は目を瞑っているのですが、台本にないはずのライターに火をつけるカチッという音が聞こえたときに、僕も季節と同じように、今この瞬間には悠二と僕しかいないという空間がちゃんと共有できました。」とこのシーンへの思い入れを話した。
また、監督は「“目に見えるものだけを作らないという精神“があって、それまで歩んできた軌跡のようなものを部屋に散りばめました。」と、映らないところにも工夫を凝らしていたことを明かした。また、佐々木の部屋について、「僕が人生で一番大切にしている『バカボンド』という漫画が置かれているんですけど、1、2巻だけ置いてなくて。それは悠二の部屋にあるという、これはみんなで作り上げたストーリーを一つひとつ積み上げたものなのですが、そういうものを大事にするのが映画の良さかなと思っています。」と話した。さらに、「そこに佐々木の温もりを感じ取れないと意味がないので、目にはもちろん温度は映らないけど、温度が映るような設計は入念に話しました。」と美術への力の注ぎ方も熱く語った。
劇中に出てくる人物の名前をタイトルに使いたかったという監督は「点をどこで打つかも考えました。見た人の一人ひとりにそれぞれの“イン、マイマイン“があればいいなと思いこのタイトルにしました。」と由来についても話した。
最後に細川は「この作品はずっと作りたかった映画で、ただ目の前にある自分が本当に面白いと思っている映画を、こうやってたくさんの方に見てもらえたことを本当に嬉しく思います。この映画のために、どうこれから自分が俳優として立っていくのか、どう進んでいくのかということを前向きに捉えられるような作品になりました。」と挨拶。また、藤原は「頑張ります!めちゃめちゃ頑張ります!」と決意をあらわにした。
【写真・文/市原唯衣】
映画『佐々木、イン、マイマイン』は2020年11月27日(金)より新宿武蔵野館、シネクイント、池袋シネマ・ロサほか全国で順次公開!
監督:内山拓也
出演:藤原季節、細川岳、萩原みのり、遊屋慎太郎、森優作、小西桜子、河合優実、井口理(King Gnu)、鈴木卓爾、村上虹郎
配給:パルコ
©『佐々木、イン、マイマイン』
第33回東京国際映画祭は2020年10月31日(土)~11月9日(月)に六本木ヒルズ、EXシアター六本木ほかで開催!
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