『ばるぼら』の上映会後のQ&Aが11月17日(火)に日本外国特派員協会で行われ、手塚眞監督が登壇した。
手塚治虫が1970年代に「ビッグコミック」(小学館)に連載し、禁断の愛とミステリー、芸術とエロス、スキャンダル、オカルティズムなど、様々なタブーに挑戦した大人向け漫画「ばるぼら」。その独特な世界感から”映画化不可能”と言われていたが、手塚治虫生誕90周年を記念して初映像化。監督は原作者・手塚治虫の実子でもある手塚眞、撮影監督はクリストファー・ドイルが務め、異常性欲に悩まされている耽美派小説家・美倉洋介を稲垣吾郎、芸術家のミューズであり自堕落な生活を送る謎の女・ばるぼらを二階堂ふみが演じる。日本映画界でも異彩を放つ2人が、甘美で退廃的な『ばるぼら』の異世界に全身全霊で臨んだ。
11月11日(水)~15日(日)にローマで開催されたイタリア最古のファンタ系映画祭「ファンタ・フェスティバル」にて最優秀作品賞を受賞したことが発表された本作。この受賞を「この作品にとって最初の賞で、それがイタリアの、しかもファンタスティック系の映画祭だということが、大変嬉しいです」という手塚監督は「『白痴』という私の過去の作品もヴェネチアの映画祭に招待され、その後たくさんのイタリアの映画祭に招待されているという思い入れがあります。イタリアにはフェリーニ監督を始め、非常にアーティスティックな美学をもった監督がたくさんいらっしゃるところで、そういう監督の美学で学んで育ってきた人が日本の私の作品に同じような美学を感じてくださっていることが、とても嬉しいです」と語った。
本作のビジュアル面について“1960年代的なヌーヴェルヴァーグ的な感じがした”という観客からの質問に「(原作漫画が描かれた)70年代をリアルに再現することは最初から考えていませんでした。これはもっと普遍的な内容を扱っていますので、いつの時代であっても良いような時代を考えました」という手塚監督は「映っているのは現代の東京の姿ですが、その味付けとして時代を超えたような、時代を戻ったような味付けをしていることは事実です。特にそれを感じられるのは音楽の使い方ではないかと思います。50年代から60年代あたりのジャズの音楽のニュアンスをたくさん取り入れましたので、デジャブな感覚のする作品になっていると思います」と音楽面での工夫が加えられていることを明かした。
また、自身の父である手塚治虫原作を映画化するにあたって「原作は何十回も読んでいますし、ほとんどの内容を記憶しています。その上で、あまり原作を気にしないで自然に作ってみようと思いました」という手塚監督は「元々の漫画の中にもファンタスティックな場面がありますが、自分が好きな場面が多いので、そこは作っていてとても楽しかったです。この映画に参加した出演者やスタッフたちも漫画が大好きでした。あまりはっきりとしたビジョンを決めてしまうのではなく、彼らに仕事を任せてみようと思いました。彼らがどのように演じたり、また作っていくかということに興味があったからです。見ていたら面白い方向に皆さんが仕事をしていたので、あとは私がまとめるだけで良かったということです」と映画化へのアプローチを明かした。
本作の独特な世界観が表現されていることについては「手塚治虫の漫画そのものは日本が舞台になっていたとしても、非常にインターナショナルな漫画」という手塚監督。その上で「海外で映画にしませんかというアイデアもいただきました。例えばプラハあたりを舞台にしてやると良いのではという話もありましたが、逆に私は東京の新宿で撮る方が面白いのではないかと思いました。そうすることによって、普段日本人である私たちが気づいていない東京の面白さが表現できると思いましたし、ストーリーや登場人物の行動に関係する日本人的な考え方が、外国で作るのとは違う内容で作れるのではないかと思いましたので日本で撮影しました」と語った。
映画『ばるぼら』は2020年11月20日(金)よりよりシネマート新宿、ユーロスペースほか全国で公開!
監督・編集:手塚眞
出演:稲垣吾郎、二階堂ふみ、渋川清彦、石橋静河、美波、大谷亮介、ISSAY、片山萌美/渡辺えり
配給:イオンエンターテイメント
映倫区分:R15+
©2019『ばるぼら』製作委員会