証言を見守る三上


実在した男をモデルに“社会”と“人間”の今をえぐる問題作『すばらしき世界』で役所広司が演じる主人公・三上正夫の場面写真が解禁された。

本作は、「復讐するは我にあり」で直木賞を受賞した佐木隆三の小説「身分帳」を原案とした西川美和監督最新作。これまでオリジナルにこだわり続けた西川美和監督が、初めて実在の人物をモデルとした原案小説をもとに、その舞台を約35年後の現代に置き換え、徹底した取材を通じて脚本・映画化に挑んだ。主演は、国内外でその演技力を高く評価され続ける名優・役所広司。ほかに仲野太賀、長澤まさみ、橋爪功、梶芽衣子、六角精児、北村有起哉、安田成美らが名を連ね、名実ともに豪華なキャストたちが西川監督のもとに集結した。

1月1日、役所広司は満65歳の誕生日を迎えた。昨年は、「映画館へ行こう!」キャンペーン2020のアンバサダーにも就任し、映画館で映画を観ることの魅力や日本映画に対する思いを語るなど精力的に映画界に貢献した役所が本差うで演じる東京の下町の片隅で暮らす三上正夫は、見た目は強面でカッと頭に血がのぼりやすい性格だが、真っ直ぐなくらい優しく、困っている人を放っておけない男。しかし、彼は、人生の大半を刑務所で過ごしてきた元殺人犯だった―。今回、“今度こそ堅気ぞ”と決意を胸に13年振りに出所した三上の場面写真が一挙解禁された。

三上が13年前に裁判を受ける様子や、受刑者の経歴を事細かに書き写した個人台帳である身分帳の写真など収監される前の様子が見てとれる写真や、収監され刑期を全うする三上、出所後、刑務所で培ったミシンの技術を披露する様子、免許の再取得に奮闘する三上の様子など真面目に更生への道を進んでいるかに見える一方で、チンピラに睨みを利かせ一発触発の不穏な場面もうかがえ、波乱に満ちた三上の人生の再出発の様子が分かる。

社会のレールから外れながらも、何とかまっとうに生きようと悪戦苦闘する役所演じる三上の姿に称賛が集まり、第56回シカゴ国際映画祭にて観客賞、今村昌平監督作『赤い橋の下のぬるい水』以来、自身2度目となる最優秀演技賞(役所広司)の2冠の快挙を達成した。三上というキャラクターについて役所は「(三上は)小学校のときの道徳の時間で、学校の先生たちが困った人を見たら助けようとか、そういう正義感について教えてくれるけど、成長していく中で、ほとんどの人がその教えを破っていく。社会に出ると、正義を貫くことはだんだん難しくなってくる。でも、三上はその受けた教育をそのまんま実行していて、人が困っているのを見ると助ける、いじめられる人を見過ごせない。彼は幼い時に学校で言われた『小さな親切をしましょう!』という教えをただ守っているんじゃないですか」と語る。

人間がまっとうに生きるとはどういうことなのか、私たちが生きる今の時代は“すばらしき世界”なのか。この人間味溢れる男を追っているうちに、周りにいる人々や観客の私たちへ幾多の根源的な問いを投げかけるとともに、心機一転、決意を新たに、人生を歩もうとする三上正夫の姿に勇気づけられる作品ともいえる。

映画『すばらしき世界』は2021年2月11日(木・祝)より全国で公開!
脚本・監督:西川美和
出演:役所広司、仲野太賀、六角精児、北村有起哉、白竜、キムラ緑子、長澤まさみ、安田成美/梶芽衣子、橋爪功
配給:ワーナー・ブラザース映画
©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会