実在した男をモデルに“社会”と“人間”の今をえぐる問題作『すばらしき世界』のスポット映像2種類が解禁された。

本作は、「復讐するは我にあり」で直木賞を受賞した佐木隆三の小説「身分帳」を原案とした西川美和監督最新作。これまでオリジナルにこだわり続けた西川美和監督が、初めて実在の人物をモデルとした原案小説をもとに、その舞台を約35年後の現代に置き換え、徹底した取材を通じて脚本・映画化に挑んだ。主演は、国内外でその演技力を高く評価され続ける名優・役所広司。ほかに仲野太賀、長澤まさみ、橋爪功、梶芽衣子、六角精児、北村有起哉、安田成美らが名を連ね、名実ともに豪華なキャストたちが西川監督のもとに集結した。

今回、人生の大半を刑務所で過ごした三上(役所広司)を番組のネタにする敏腕TVプロデューサーを演じた長澤まさみがナレーションを担当する15秒スポット映像「ドラマ編」「問題作編」が解禁された。「ドラマ編」では、冒頭で長澤まさみが演じるTVプロデューサー吉澤の今の社会を映し出す印象的なセリフから始まり、13年ぶりに出所した元殺人犯、三上が社会で新たな一歩を踏み出す姿が映し出される。「一度人生のレールを外れた男が見た世界とはー?」そして最後に、長澤まさみのナレーションが問いかけてくる。「あなたはこのラストに何を感じますか?」人生の大半を刑務所で過ごした男が見た「新たな世界」は、地獄か?あるいは?この世界は「すばらしき世界」なのか―。観客それぞれの胸に突きつけてくるラストシーンが期待できる。

もう1種類は、「問題作編」。「俺はとうに足を洗ってる!」役所広司演じる人生の大半を刑務所で過ごした男の怒号が鳴り響く。13年ぶりに出所して社会のルールにとまどう元殺人犯、三上。そんな三上を番組のネタにしようと、テレビマンの津乃田(仲野太賀)と吉澤(長澤まさみ)がすり寄るが・・・。「人生のレールを外れた男が見た世界とはー?」笑顔で走る。泣き崩れる。怒り狂う。様々な感情を爆発させる三上の姿。人生の大半を刑務所で過ごした男に待ち受ける運命は?再生か?再犯か?それとも―。

スポット映像「ドラマ編」

スポット映像「問題作編」

本作で仲野太賀とともに三上を取材する“TVプロデューサー”という世間の代表を軽やかに演じるのは長澤まさみ。長澤が演じるのはTVプロデューサーの吉澤役。若手テレビマンの津乃田(仲野)に刑務所の受刑者の経歴を事細かに記した台帳「身分帳」を送り、13年ぶりに出所した三上正夫(役所)という人物をテレビ番組のネタとして取材するよう焚きつける。乗り気ではなかった津乃田は言われるがままに三上に近づき取材を敢行。三上の密着映像を目にするなり、「もう最高じゃん・・!」と、様子を伺う津乃田の事は素知らぬふりで不敵な笑みを浮かべる。三上と対面するや、本音と建前を使い分け言葉巧みに三上をそそのかそうとする。そんな場面で吉澤が津乃田へ放つ口撃はなんとも痛烈で、傍観していた私たち観客も思わずハッとさせられる――。

“この役には長澤まさみしかいない”と思ったという西川監督は「(長澤さんは)年齢と共にどんどん幅が広くなっている。もちろん、画面的にも№1の美しさだと思います。きれいな女優さんであればあるほど、なかなかヒール(悪役)役を受け入れることに時間がかかると思うんです。でも今の長澤さんなら、これくらいの悪役は、跳ね返してやってくれるだろうなと思ってお願いしました」と語る。

吉澤というキャラクターについて、西川監督と衣裳合わせの際に人柄や仕事に向かう姿勢などを話したという。長澤は、西川組、役所の芝居に対する姿勢に触れ、「常に緊張感があり、コツコツと積み重ねる仕事だと改めて思った」「求められているものが、どんどん明確になっていくのが楽しかった」と現場を振り返る。「台本はのめりこむようにあっという間に読んでしまいました、時代の流れと共に変わっていく人間の感覚について考えさせられましたね。(出所したばかりの三上は)時代錯誤な人に感じられるけど、そういう時が経ったことに気付いていない人はじつは世の中には沢山いると思います。最後はふしぎと心が温かい気持ちになる作品です」と思いをはせた。

また、役所演じる三上、西川作品の男性像について「三上はどこか愛らしくて可愛らしい一面があるので、(観客は)感情移入していけると思います。過激なシーンもあるんですけど、それがクスクス笑えるシーンになるんです。お芝居を重ねるうちに三上の別の顔をもっともっと観たいと思っていました。西川監督の作品に出てくる男性たちは、どこか欠点があって、完璧でない部分が人間らしさにつながっていると思います。」と語っている。

一見、吉澤というキャラクターは利益の為なら厭わない下世話さや冷徹さが前面に出ていくのだが、実は彼女の放つ言葉には社会の不寛容や憤りに問題点を感じ、この世の中に一石を投じてやるという確固たる信念も垣間見える。吉澤のセリフの端々にはテレビマンとしての誇りも感じさせるのだ。“才色兼備の切れ者”吉澤がただのヒールではおさまらないのは、長澤まさみの演技力の賜物にほかならない。真っ直ぐにしか生きられない三上とは真逆の、スキルも強みも自覚しながら世間を冷静に見つめ、強くしなやかな女性を演じる長澤まさみのさらなる活躍に期待だ。

映画『すばらしき世界』は2021年2月11日(木・祝)より全国で公開!
脚本・監督:西川美和
出演:役所広司、仲野太賀、六角精児、北村有起哉、白竜、キムラ緑子、長澤まさみ、安田成美/梶芽衣子、橋爪功
配給:ワーナー・ブラザース映画
©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会