<メイキング写真>
左からチャン・タン・フイ監督、チャン・アン・コア(ロム役)、アン・トゥー・ウィルソン(フック役)


ベトナム社会のタブーに切り込んだ衝撃作『走れロム』の公開日が6月11日(金)に決定した。

本作は、サイゴンの裏町を舞台に、孤児の少年ロムが夢を叶えるため、巨額の当選金が手に入る闇くじに挑む姿を、疾走感溢れるスタイリッシュな映像とエモーショナルな演出で描いた話題作。監督は、長編デビュー作にして釜山国際映画祭ニューカレンツ部門(新人監督コンペティション部門)最優秀作品賞の受賞はじめ世界各国の映画祭で熱い視線が注がれる期待の新鋭チャン・タン・フイ。プロデューサーには、『青いパパイヤの香り』『シクロ』で知られる名匠トラン・アン・ユン監督が名を連ねる。

世界で輝かしいデビューを飾った本作だが、社会主義国家のベトナムにおいて顕在化させたくない社会問題となっている“闇くじ”を描いたことで、当局の検閲が入り修正を余儀なくされる。そうした苦境を経て迎えた本国ベトナムでの公開は、ロングランヒット中だったクリストファー・ノーラン監督の超大作『TENET テネット』を興行成績で圧勝する奇跡の大ヒットを記録、一大センセーションを巻き起こした。

今回、本作の公開日が6月11日(金)より東京はヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺で公開、6月18日(金)よりシネ・リーブル梅田、名古屋は、近日公開にて名古屋シネマテークでの劇場公開が決定した。

『走れロム』の前日譚で、チャン・タン・フイ監督が注目されるきっかけとなった短篇『16:30』に続いて主人公ロムを演じるのは、実弟でもあるチャン・アン・コア。起用についてフイ監督は「撮影方法を、各シーンにふさわしい天候や状況、それも太陽が出ている時間帯だけ撮るという手法を選んだため、撮影だけで短篇『16:30』は3か月半、『走れロム』は1年7か月かかり(『走れロム』で実際に撮影したのは89日間)このスケジュールに合わせられることが、キャスティングの条件の一つでした。その上で、知名度や演技経験を問わず、目でストーリーを語れる人を探した中、ロム役に自分の家族を使うという暴挙に出たわけですが、彼以上にロム役にふさわしい人はいなかったと思います。演技経験がないゆえに、失敗をすればするほど経験が増えてロムという人間になっていきました。また、顔が私に似ている点でも私の人生を描いた映画にはぴったりでした」と語っている。

本作にプロデューサーとして参加しているトラン・アン・ユンについて、チャン・タン・フイ監督は、最も影響を受けた映画作家として名前をあげ、彼の手がけた『シクロ』のような社会を映し出す作品を作っていきたいと語っている。2人の出会いは、トラン・アン・ユン監督がサポーターを務めるオンラインの短編映画祭に、チャン・タン・フイ監督の短編『16:30』が上映されたことが縁となった。現在、フイ監督の次回作『Tick It』(原題)もトラン・アン・ユン監督とともに準備中だ。

編集を担当した、リー・チャータメーティクンは、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督『ブンミおじさんの森』(2010)、『光りの墓』(2015)、中国のワン・シャオシュアイ監督『在りし日の歌』(2019)など、アジア映画界を股にかけて活躍するレジェンドで、タイが生んだ名編集者。音楽は、ダンス、演劇、映画などさまざまなジャンルで活動し、舞踊家の金森穣、台湾の歌手廖士賢をはじめとする各国のアーティストとのコラボレーションでも知られる、トン・タット・アン。映画音楽を手がけた作品には、レオン・レ監督『ソン・ランの響き』(2018)、アッシュ・メイフェア監督『第三夫人と髪飾り』(2019)、そして、河瀨直美監督『朝が来る』(2020)がある。また、彼の父親は、本作のプロデューサートラン・アン・ユンの監督作品『青いパパイヤの香り』(1993)、『シクロ』(1995)、『夏至』(2000年)の音楽を担当している。

臨場感あふれるカメラワークの立役者、撮影監督のグエン・ヴィン・フックは、15歳の時に映画のワークショップでチャン・タン・フイ監督と知り合って以来、切磋琢磨し何本も一緒に作品を作ってきた仲間の一人。新鋭レ・ビン・ザン監督による、人肉ホラーの問題作『KFC』やベルリン国際映画祭エンカウンターズ部門で審査員特別賞を受賞したレ・バオ監督『Taste』(2021)などの撮影を担当するなど新世代監督たちの撮影を担っている人物だ。新進気鋭の監督、チャン・タン・フンのもとに個性豊かな才能が結集し、映画『走れロム』は誕生した。

映画『走れロム』は2021年6月11日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で順次公開!
監督:チャン・タン・フイ
出演:チャン・アン・コア、アン・トゥー・ウィルソン
配給:マジックアワー
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