『映画 太陽の子』の初日舞台挨拶が8月6日(金)にTOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、柳楽優弥、有村架純、黒崎博監督が登壇した。

パイロット版と言うべきテレビドラマが2020年にNHKで放送され、大きな反響を呼んだ「太陽の子」。ドラマ版とは異なる視点と結末が加わり、ついに物語が完結。主演・柳楽優弥、有村架純、三浦春馬さんの豪華共演で“日本の原爆開発”を背景に、時代に翻弄されながらも全力で駆け抜けた若者たちの等身大の姿を描いた青春群像劇。太平洋戦争末期に実際に海軍からの密命を受け京都帝国大学・物理学研究室が行っていた「F研究」と呼ばれる新型爆弾開発の事実を基に作られたフィクション作品。極秘任務に携わる科学者・修を柳楽優弥、修とその弟がほのかな想いを寄せる幼なじみの世津を有村架純、修の弟で戦地で心に傷を負った軍人・裕之を三浦春馬さんが演じる。ドラマ版とは異なる視点と結末が加わり、ついに物語が完結。時代に翻弄され、それぞれの葛藤や想いを抱え全力で生きた若者たちの、等身大の姿が描かれる。

共演した有村や三浦さんとの撮影について「本当にたくさん思い出があるんです。食事に行ったり、撮影していない時も役柄に似ているような感じで」と明かす柳楽だが、特に撮影では「川沿いを僕と春馬くんが走っているシーンがあるんですけど、春馬くんがタフで僕がなかなか追いつけなかったのがキャラクターとリンクしていて」と感慨深げに振り返った。

そんな2人との撮影を有村は「柳楽さんはとても周りを巻き込む力が強い方だなと思って。そこにいるだけで回りがどんどん引っ張られていく、吸い込まれていく感覚があって、空気が変わるってこういうことなんだなと思いました」とコメント、さらに「春馬さんはそれとは違って、いろんな個性がある空気をすべて調合して、また新しいものを作ってくれるという雰囲気を感じて。だから春馬さんはどこに行っても、みんなが気持ちよく場が流れていく空気を作れる役者さんなんだなと感じました」と2人を称賛した。

イベントではシーンの写真をスクリーンに投影してトークが行われたが、京都の美しい海の写真が写された際には「すごく大きなハチの巣があった」と言う有村。さらに「『ハチの巣があります』ってお話をしたらスタッフさんががんばって取ってくださってみんなが救われました」と明かすと、柳楽も「(ハチが)砂浜からですよ!(笑)」とまさかの遭遇に驚いた様子を明かした。

また、このシーンでは「戦時中ということを忘れて、3人が子どもに帰ったような気持ちで過ごす重要なシーンでもあって。すでに空気感ができあがっていて、アドリブもあったり、とても印象に残っています」と語る有村。しかし、「ここに来るまでに30分くらい船に乗って。浜辺に移動するにも、衣装が濡れないようにたくし上げたり(笑)スタッフさんも機材があるので一苦労だったと思うんですけど、そういうことも含めて印象的です」と思い出を振り返っていた。

最後に黒崎監督は「敵と味方の話じゃなくて、もっとそれを超えたところで人間みんなの問題として見てもらいたいと思った。正直に申しますと、足りないじゃないかと思います。なんで春馬くんここにいないんだろうと。すごく悔しい気持ちもあるんですけど、見ていただいたみなさんに感じていただけたら嬉しいのは、スクリーンの中に一緒に走り切った姿は残っていて、今でもリアルタイムにお互いを感じながら話をすることができるのは幸せだと思っています。柳楽くんも有村さんも春馬くんもそうだし、みんなで言いたかったのはどんなに難しい状況でも最後は生きて生きて生き抜くしかないということ、そのストレートなメッセージだけは少しでもみなさんに残ると、こんなにうれしいことはないと思っています」と言葉を噛み締めた。

有村は「戦時下の話ではあるんですけど、当時生きた若者たちが未来を作るために生き抜いていくお話でもあって。未来というのは今は先行きが不透明で、考えるにも疲労してしまう状況だと思うんですけど、そこで考えることをあきらめてしまうのは私としては心苦しいなと思います。春馬さんもよくおっしゃっていた『自分たちの仕事、役目は想像力を届けることだ』ということを改めて自分も、みなさんと一緒に考えていけたら嬉しいなと思います」とコメント。

柳楽は「この映画があるということがとても大事だと感じます。今日、広島で行われた式典で小学生のスピーチがとても印象に残ったんですけど、『(本当の)別れは会えなくなることではなく、忘れてしまうこと』ということをおっしゃっていて印象的でした。人に対しても歴史に対しても、忘れていくということが一番怖いと感じました。映画を通してみなさんに伝えられているというのは、改めて平和への第一歩なのかなと感じました」とメッセージを送った。

【写真・文/編集部】

『映画 太陽の子』は公開中!
監督・脚本:黒崎博
出演:柳楽優弥、有村架純、三浦春馬、イッセー尾形、山本晋也、ピーター・ストーメア、國村隼、田中裕子
配給:イオンエンターテイメント
©2021 ELEVEN ARTS STUDIOS / 「太陽の子」フィルムパートナーズ