前作から3年後を描く続編『孤狼の血 LEVEL2』が8月20日（金）より公開される。

舞台は前作から3年後。広島の裏社会を収めていた伝説の刑事・大上亡き後、その遺志を受け継いだ若き刑事・日岡秀一。権力を用い、暴力組織を取り仕切っていた日岡だったが、出所してきたたった一人の“悪魔”によって事態は急転していく…。

本作は柚月裕子の小説シリーズ第1弾の『孤狼の血』を原作にした映画『孤狼の血』(2018年公開)の続編。続編の製作は公開初日に決定していたとのことだが、前作は続編を気にせずに原作とは違う結末を描いたため、本作は完全オリジナルの作品として製作された。舞台は呉原市という架空の街だが、前作からモデルとなっている広島県呉市を舞台とし、すべて広島で撮影されている。昭和感あふれる街並みは男臭いこの物語とマッチしており、暴力と恐怖の世界へ引きこまれる。

あの優等生刑事だった松坂桃李演じる日岡が呉弁を使い、暴力組織を取り仕切り、それは大上という男に翻弄された姿だった。第1作で役所広司が作り上げた大上という男の存在の大きさを感じ、彼が愛用していた狼のライターとハイライトは汗臭く血にまみれた男の象徴のようだ。

実力派の俳優陣で固めた役者たちが、目の前で血と暴力を繰り広げ、その後の展開を考える隙間も与えない。ただ、正義と悪が戦うわけではない。何が正義で何が悪なのか、多くは語れないがまさかの展開を加えてくる。そして、本作の“悪魔”である上林を演じた鈴木亮平のスクリーンに映る姿は、極悪非道の最強で最凶の男だった。激しいシーンが多いがその演技力と迫力に圧倒されて目が離せなくなる。
そんな彼らを取り巻くのは寺島進、宇梶剛士、そして組織のトップでありながらも弱弱しい会長を演じ、本作で唯一ユーモラスな広島仁成会・会長を吉田鋼太郎が演じている。また、上林組と対立している尾谷組には渋川清彦、斎藤工、早乙女太一らが激しい対立戦を繰り広げ、その他にも滝藤賢一や中村獅童、中村梅雀ら全員が物語の重要な役どころを演じ、観客に存在感を見せつけている。

3日間かけて撮影したという日岡と上林の決闘のシーンはただ暴力的なだけでなく、そこには男たちの譲れない闘いがありクライマックスに相応しいシーンとなっている。また、このベテラン俳優陣の中で姉弟役を演じた近田真緒役の西野七瀬とチンタこと近田幸太を演じた村上虹郎はこの物語の重要な役どころで、家族の絆や強く生きている弱き者を演じている。西野は刑事の日岡と親密な関係だが、そんな日岡や危険な場所へ足を踏み入れている弟のチンタを心配しながらも自ら“スタンド　華”のママとして働き強く生きている女性を演じており本作では、女優としての新たな一面を見ることができる。また、西野の弟役を演じている村上虹郎は存在感があり、弱く不器用だが、正義感があり家族想いの必死に戦う男の姿を表現している。

大上に翻弄された男は正義か悪なのか…新たなステージに帰ってくる―。

【文／片岡由布子】

映画『孤狼の血 LEVEL2』は2021年8月20日（金）より公開！
監督：白石和彌
出演：松坂桃李、鈴木亮平、村上虹郎、西野七瀬、音尾琢真、早乙女太一、渋川清彦、毎熊克哉、筧美和子、青柳翔 斎藤工・中村梅雀・滝藤賢一、矢島健一、三宅弘城、宮崎美子、寺島進、宇梶剛士、かたせ梨乃、中村獅童、吉田鋼太郎
©2021「孤狼の血II」製作委員会