志田彩良主演映画『かそけきサンカヨウ』の今泉監督のオフィシャルインタビューが到着した。

家庭環境のせいで早く大人にならざるを得なかった高校生・陽の葛藤と成長が、同級生・陸との“恋まではたどり着かないような淡い恋愛感情”を交えて描く本作。主人公・国木田陽を志田が、陽をやさしく見守る父親・直を井浦新、陸を「ドラゴン桜」でも志田と共演した鈴鹿央士が演じている。監督は作品に流れる空気感やリアリティが高い評価を受け、『愛がなんだ』のヒット以降、『アイネクライネナハトムジーク』、『mellow』、『his』と作品を作り続け、今年は『あの頃。』『街の上で』と既に2本も作品が公開されている今泉力哉。主人公・陽が家族について悩みながら成長していく姿を丁寧に映像化した。

今泉力哉監督

本作の原作である窪美澄の短編集「水やりはいつも深夜だけど」の魅力を「人によっては囚われてしまうような“家族”を、みんな絶対的にいいものとして言葉にすることについて前々から疑問を持っていて。でもこの短編集は“歪みのある家族”について描いていた。その点に惹かれました」と語り、なかでも、幼い頃に母親が家を出て以来、父とふたり暮らしをしてきた少女・陽の葛藤と成長を描いた一篇「かそけきサンカヨウ」に引き付けられたという今泉監督。

「出て行った生みの母との関係も、普通ならもっと憎しみの率を高くして書きそうなところを、陽は画家である母に対してある種の憧れを持っていたりする。新しくできた妹に対しても、もっと憎しみや嫉妬があってもおかしくないのに、そうは書いていない。“普通はここに葛藤を作る”というところ以外にさまざまな溜め込みがあり、しかもその描き方が丁寧。作り物ではない本当の悩みって感じがしたんです」と原作の感想を語る。

映画には父・直と陽の10分弱の長回しシーンがあるが、本番前に父親の台詞を足してもっと説明した方がいいとなり、直の台詞を増やしたバージョンでテストした際、陽役の志田が“足された父の台詞”を飛ばして、その後の自分の台詞を言う、ということがあった。それを「あれは志田さんのミスではなく、そういう役者の生理だったんだと思います」と、改めて直役の井浦と志田で話し合い、直の台詞は足さずに本番を撮影することに。

「こういうことが現場で起こると、作り物ですが、どんどん本物に近付くと思えるんです。もちろんフィクションはある種の嘘をつくことで面白くなることもあるとわかっています。でも、やっぱり好みなんでしょうね。自分は嘘の許容範囲がすごく狭い。物語のためにキャラクターが存在したり、動いたりする、というようなことは自分が映画を作る時はできるだけなくしようと思っているんです」と印象深いシーンの撮影裏を明かした。「言葉にするなら、ある家族の再生の物語、とかなのかもしれませんが、言葉では説明できない細微な感情をめいっぱい詰めこんで映画にしました」と監督自身が語る本作は、10月15日(金)より全国で公開。

映画『かそけきサンカヨウ』は2021年10月15日(金)より全国で公開!
監督:今泉力哉
出演:志田彩良/井浦新、鈴鹿央士、中井友望、鎌田らい樹、遠藤雄斗、石川恋、鈴木咲、古屋隆太、芹澤興人、海沼未羽、鷺坂陽菜、和宥、辻凪子、佐藤凛月、菊池亜希子/梅沢昌代、西田尚美/石田ひかり
配給:イオンエンターテイメント
©2020 映画「かそけきサンカヨウ」製作委員会