『アメリカン・ガール』


第34回東京国際映画祭アジアの未来部門『アメリカン・ガール』。

「アジアの未来」部門の合言葉は"アジア発、世界へ!未来へ!"―。長編3本目までのアジア(日本・中東を含む)の新鋭監督の作品を世界に先駆けて上映されるアジア・コンペティション部門。今年は日本映画2本が入選し、すべて世界初上映(ワールド・プレミア)の10作品が競い合う。

アメリカで母と娘と暮らしていた少女が、母の病気がきっかけで、父の暮らす台湾に戻ってくる。なかなか台湾での生活に慣れない主人公が、家族とぶつかりながら成長していくストーリー。主人公だけでなく、父、母、妹など様々なキャラクターの視点も細かく描かれているため、幅広い層の人が楽しめる作品である。

特に印象に残った場面は、物語終盤で登場する父と母、主人公の3人による喧嘩のシーン。俳優達の持つ熱量が凄く、画面を通してエネルギーがダイレクトに伝わってくるのが素晴らしかった。また、母が手術後の傷の手当てを受け、涙を流した場面も印象的だった。物理的に傷が痛いのでなく、心の傷を巧みに表現した涙だったと思う。4本の傘が並ぶカットが、まるでこの作品を通して描かれた家族像を表しているようで優しい気持ちになる。

【文/編集部】

第34回東京国際映画祭は2021年10月30日(土)~11月8日(月)に日比谷・有楽町・銀座地区で開催!
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