『コーダ あいのうた』のアカデミー賞作品賞受賞記念舞台挨拶が4月9日(土)にTOHOシネマズ日比谷で行われ、上白石萌音が登壇した。
豊かな自然に恵まれた海の町で暮らす高校生のルビーは、両親と兄の4人家族の中で一人だけ耳が聞こえる。陽気で優しい家族のために、ルビーは幼い頃から“通訳”となり、家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、秘かに憧れるクラスメイトのマイルズと同じ合唱クラブを選択するルビー。すると、顧問の先生がルビーの歌の才能に気づき、都会の名門音楽大学の受験を強く勧める。だが、ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられず、家業の方が大事だと大反対。悩んだルビーは夢よりも家族の助けを続けることを選ぶと決めるが、思いがけない方法で娘の才能に気づいた父は意外な決意をする…。主人公・ルビーをエミリア・ジョーンズ。共演はフェルディア・ウォルシュ=ピーロ。そしてルビーの家族であり、トロイ・コッツァー演じるフランクの妻をマーリー・マトリンであり、彼らは全員が実際に耳の聞こえない俳優たちでもある。
本作のテレビスポットのナレーションを担当する上白石萌音が登壇した今回の舞台挨拶。上白石は、本作についてはこれまでに「ここ数年で一番好きな映画」「10回は泣いています」と絶賛している。冒頭の挨拶では「みなさんこんにちは、私の名前は上白石萌音と言います。『コーダ あいのうた』アカデミー賞おめでとうございます。今日は一緒に楽しみましょう」と手話で挨拶し、「心揺さぶられましたし、これから先何回も見返すと思います。すでに何回も見ています。歌がもっと大好きになったし、手話を始めたいと思うきっかけになりました」と本作への思いを語った。
「マスク1枚ダメにするくらい泣いた」という上白石は「ルビーがお父さんのために歌を歌うシーン」と挙げ、「娘が歌っている嬉しさと、自分が聞こえない切なさが顔だけで分かるシーンでした。歌って耳で聞くだけのものじゃないんだなと感じたシーンでした」と振り返った。また、上白石は「言葉より確かなこと」と字幕がなくても伝わる思いがあることを語った。
今回、アカデミー賞で作品賞をはじめ3冠を受賞した本作だが「こんなに愛にあふれた素敵な作品が、作品賞を獲るってすごく素敵な世界だと思いました」と興奮気味に語り、「ルビーがドレスアップして、すごくきれいで輝いているところを見て本当によかったと思いました」と授賞式の様子について熱く語る場面も。また、「みんなが同じように理解できる社会って素敵だなと思います」とコミュニケーションの取り方について改めて考えさせられた様子だった。
さらに、自身にとっての“歌”は「一番好きで一番怖いもの。好きだからこそ怖いです。家で一人で歌う分には好きでいいんですけど、お仕事になると好きだからこそいい歌を歌いたいと思うし、歌に失礼のないようにと思います。怖くて怖気づいちゃってるときに勇気をくれるのは歌なんです。歌がなかったら生きていけないくらい大切なもの」と思いを語った。
本作については、妹の上白石萌歌にも勧めたといい「我が家ではサントラがずっと流れてます。父も母も見て、みんな『コーダ』が大好き」と笑顔を見せた上白石。そんな家族については「ルビーのように、家族のことを心から愛しています」と照れ笑いを浮かべつつ答えた。
最後に上白石は「映画館に行ってみたら(自宅で見るものとは)全く表情が違いました。おうちでいろんな生活音の中で見る『コーダ』と、映画館の静寂の中で見る『コーダ』が全く違ったんです。聞こえてくる音の数が違うし、静けさの種類が全く違った。今は早く配信が始まりますし、どこで見られる時代になりましたけど、『コーダ』は絶対に映画館で見るべきだと強くお勧めしたいです」とメッセージを送った。
【写真・文/編集部】
『コーダ あいのうた』は全国で公開中!
監督・脚本:シアン・ヘダー
出演:エミリア・ジョーンズ、フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、マーリー・マトリン
配給:ギャガ
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