アカデミー賞3部門ノミネートの“心揺さぶる真実の物語”―『FLEE フリー』に各界の著名人からコメントが到着した。
主人公のアミンをはじめ周辺の人々の安全を守るためにアニメーションで制作されたデンマークほか合作によるドキュメンタリー映画である本作。いまや世界中で大きなニュースになっている難民やアフガニスタンを巡る恐ろしい現実、祖国から逃れて生き延びるために奮闘する人々の過酷な日々、そして、ゲイであるひとりの青年が自分の未来を救うために過去のトラウマと向き合う物語を描く。昨年のサンダンス映画祭でワールド・シネマ・ドキュメンタリー部門の最高賞であるグランプリを獲得、アヌシー国際アニメーション映画祭でも最高賞となるクリスタル賞ほか3部門を受賞するなど、ドキュメンタリー、アニメーションという表現の垣根を越えてジャンル横断的に高い評価を受けている。
濱口竜介(映画監督/『ドライブ・マイ・カー』)
柔らかなタッチのアニメーションは監督が主人公・アミンに対して抱く親しみを着実に観客と共有する、その最良の方法となっている。その人の生い立ちからセクシュアリティまでを知るうちに、理不尽への怒りと未来への祈りがないまぜになった感情を抱かずにはおれない。「今まさに見るべき映画」であることは間違いないが、それ以上に「他者を知ること」についての普遍的な作品でもある。
安田菜津紀(認定NPO法人Dialogue for People副代表/フォトジャーナリスト)
故郷から切り離された人々の苦難は、雨風しのげる場所を見つければ終わるわけではない。その途方もなく長い道のりを照らすのが、この映画の力だ。
小島秀夫(ゲームクリエイター)
故郷を奪われたものたちはどう生きていけばいいのか?何処に向かえばいいのか?アニメとも実写ともドキュメンタリーとも違う難民たちの魂の記憶。本作は我々の胸を深く抉り、終わりのない“旅路”を共有する。今だからこそ観るべき、いつまでも胸に刻むべき映画。
富野由悠季(アニメーション監督)
本作が示している現実は、人が構築してきた社会システムが宗教もふくめて、想像以上に人に過酷であるという事実をむき出しにしている。ここまで酷いのかという現実は、アニメ主導の構成でなければ公開できなかっただろう。
その意味で見るべき作品ではあり、知るべき現実である。
その意味でいえば、日本と言う国は楽園であると教えられる。
小川彩佳(「news23」メインキャスター)
余りに過酷な歩みの先、彼が辿り着いた「場所」の温もりに涙が溢れた。私もその「場所」の一部でありたい。
武田砂鉄(ライター)
今日も暗闇の中で過ごしている人たちがいる。
思うことしかできない後ろめたさを抱えながらも、思うことをやめたくない。
遠藤まめた(LGBTユースの居場所にじーず代表)
「難民」という二文字の背景に、数えきれない人のかけがえのない時間があることに心が揺さぶられた。
北丸雄二(ジャーナリスト・作家)
世界中の「アミン」や「アミナ」たちが悲鳴も上げられずに隠れている。
悲鳴を上げたら殺される。「逃げる」ことができるのは、それだけでも幸運な者たちなのだという、とんでもない不幸がこの世界にいまも現存している。
根本かおる(国連広報センター所長)
故郷とアイデンティティを失ったアミンが自分を取り戻していく旅路。生きることの意味を私たちに問いかける。
荻上チキ(評論家・ラジオパーソナリティ)
なんという境遇、なんという人生、なんという映像。この映画がさらにタイムリーになってしまった現実で、それでも人々の安全を願うために。
児玉美月(映画文筆家)
語ること。それはきっと、ここにいる自分を救う。語り継ぐこと。それはきっと、どこかの誰かを救う。
語り合うこと。それはきっと、わたしとあなたをもう一度出逢い直させる。
ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
誰も好き好んで難民になる人はいません。想像を絶するほど悲惨なその体験は淡々と語られるからこそずしっと刺さります。
日本でも、「避難民」と言い換えずにもう少し受け入れることができないものでしょうか。
清水晶子(東京大学 教員)
そこがアフガンであれロシアであれデンマークであれ、この映画では抑圧は常に国家暴力と関わり、同性への思慕は希望として機能する。
ダースレイダー(ラッパー)
なぜ僕はここにいるのか? それは当たり前ではなく、幾つも可能性の瞬間の積み重ねだとアミンが教えてくれる。
イシヅカユウ(女優、モデル)
「ずっといていい」故郷のある私にも、この映画について言えることがあるとすれば、アニメーションでも、だからこそ、恐ろしいほど伝わる重み、辛さを、どう抱えるか今悩んでいる。
望月優大(ライター)
アミンを追い詰めたのは母国の危険だけではない。
彼の孤独の意味を、彼がずっと語り出せなかった理由を、私たちは知る必要がある。
山村浩二(アニメーション作家・絵本作家)
国と家族の庇護を失った孤独に加え、クィアでもある主人公の声は、真摯で愛があり、忘れがたい。
太田尚樹(LGBTエンタメサイト「やる気あり美」編集長)
誰かを想って苦しみ、誰かを想って救われる。愛の気高さを教えてくれる映画でした。
ふくだももこ(映画監督/『おいしい家族』)
故郷を失う/奪われるということが、その人に何をもたらすかを、アミンは静かに語り出す。アニメーションでしか描けない現実を見せてくれる、唯一無二の映画。
とんこつたろう(ラジオパーソナリティ)
「自分とは何者か—その真実を他者と分かち合う勇気と恐怖、希望を捉えた瞬間に涙が溢れる。愛は知に宿ることを裏付けていたから。」
『FLEE フリー』は2022年6月10日(金)より新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン池袋ほか全国で公開!
監督:ヨナス・ポヘール・ラスムセン
配給:トランスフォーマー
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