アカデミー賞3部門ノミネートの“心揺さぶる真実の物語”―『FLEE フリー』の本編冒頭映像が解禁された。
主人公のアミンをはじめ周辺の人々の安全を守るためにアニメーションで制作されたデンマークほか合作によるドキュメンタリー映画である本作。いまや世界中で大きなニュースになっている難民やアフガニスタンを巡る恐ろしい現実、祖国から逃れて生き延びるために奮闘する人々の過酷な日々、そして、ゲイであるひとりの青年が自分の未来を救うために過去のトラウマと向き合う物語を描く。昨年のサンダンス映画祭でワールド・シネマ・ドキュメンタリー部門の最高賞であるグランプリを獲得、アヌシー国際アニメーション映画祭でも最高賞となるクリスタル賞ほか3部門を受賞するなど、ドキュメンタリー、アニメーションという表現の垣根を越えてジャンル横断的に高い評価を受けている。
今回、主人公の青年アミンが自身の物語を初めて語り始めるシーンを収めた本編冒頭映像が解禁された。アミンが誰にも明かしたことのなかった自身の過去を、長年の親友である映画監督(本作の監督ヨナス・ポヘール・ラスムセン)に対して初めて語る物語を録音し、それを元にアミンの人生で起きた記憶を鮮やかに描くためにアニメーションが用いられている本作。
映画は、ラスムセン監督の「君にとっての“故郷”とは?」という問いに対して、アミンは言葉を絞り出すように「それはどこか…安全な地。そこに…いることができて、よそへ行かずにすむ所。一時的ではない場所」と答える音声にのせて、今まさに崩れ去ろうとする場所から人々が逃げ惑う姿を象徴的なアニメーションで捉えた印象的な場面で幕を開ける。目を閉じ、大きく深呼吸した現在のアミンの姿から切り替わるのは、彼の一番古い記憶である幼い頃の姿。
街を走り踊るアミンが大事にしている初代ウォークマンで聴いているのは、a-haの世界的大ヒット曲「テイク・オン・ミー」。場所は生まれ故郷であるアフガニスタン、カブール。活気に満ち人々が自由を謳歌していた当時の街の様子がアーカイブ映像で映し出される中、アミンはその頃の自分の思い出を語っていく。監督によると、この「テイク・オン・ミー」はアミン自身のプレイリストに実際に入っていたもので、劇中何度か登場するアミンが音楽を聴くシーンで流れる曲は、いずれもアミンのプレイリストから採用した曲だという。
“アミン”という名前は、彼やその家族たちの安全に配慮し本作のために使用している仮名だ。本作のタイトルである「FLEE」とは英語で危険、災害、追跡者などから安全な場所へ逃げることを意味するが、本映像で映し出される“難民になる前”のアミンとその家族は、父親不在の不安の中でも穏やかに暮らしていたが、この後、内戦の拡大をきっかけに着の身着のまま故郷であるアフガニスタンを脱出することになる。本作は、祖国から逃れ生き延びたアミンが、本当の意味での“故郷”を探し求める物語でもある。
アミンは、本作完成後のインタビューで「難民に関する物語は、全般的に人々が難民と共感する道を開くことがあまりないので、だからこそ僕の物語を見てもらいたいと強く思ったのです。難民であるということがどのようなことなのか、リアルに描写されることが僕にとって非常に重要なことで、ヨナスならそれができると思っていました」と語っている。
本編冒頭映像
『FLEE フリー』は2022年6月10日(金)より新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン池袋ほか全国で公開!
監督:ヨナス・ポヘール・ラスムセン
配給:トランスフォーマー
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