ロバート・ダウニー監督の幻の傑作『パトニー・スウォープ』が半世紀の時を経て、7月22日(金)より日本公開されることが決定した。
舞台は1960年代のニューヨーク。マディソン・アヴェニューの名門広告会社の創業者が突然亡くなり、会社の唯一の黒人役員(といっても楽曲担当)であるパトニー・スウォープが予想外の結果によって新社長に選出される。早速、スウォープは会社の名前をTruth &Soulに変更し、ほぼすべての白人役員を解雇、破壊的で奇抜だが悪趣味ともいえる広告キャンペーンは次々とヒット商品を生み出し、会社は新たな成功へと飛躍する中、何とスウォープは国家安全保障への脅威であるとして、アメリカ大統領ミミオの陰謀に巻き込まれることになる…。
2021年7月7日85歳でこの世を去ったロバート・ダウニー。息子でありハリウッドを代表するスター俳優ダウニー・Jr.は父の死に際し、ハリウッドに組みせずあくまでインディペンデント映画にこだわった父親について「彼はアメリカ映画界における偉大なる真の異端児だった。」と語った。それから約1年となる今年7月、ダウニーの代表作である1969年製作の『パトニー・スウォープ』が日本初公開されることが決定した。
長らく幻の映画として知られてきた本作品だが全米で新たに注目を浴びるきっかけとなったのは、2016年にナショナル・フィルム・レジストリーに選出され、その後マーティン・スコセッシが設立したフィルム・ファンデーションとアカデミーフィルムアーカイブによって2019年にデジタル復元がなされたことによる。以後本作品は全米映画ファンの間で「見なければいけない映画」の地位を獲得している。
本作『パトニー・スウォープ』は、ジム・ジャームッシュやポール・トーマス・アンダーソンなど多くの映画作家に影響を与えた。特にアンダーソンは本作品を最も影響を受けた作品の一つに挙げ、『ブギーナイツ』でドン・チードルが演じるバック・スウォープというキャラクターを創造し本作へのオマージュとしている。また、ダウニーを役者として『ブギーナイツ』『マグノリア』で起用している。第94回アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞3部門にノミネートされたアンダーソン最新作『リコリス・ピザ』(7月1日(金)日本公開)は「ロバート・ダウニーに捧ぐ」という献辞で終わり、いま改めてダウニーはその存在感を増している。
1969年の全米公開時『パトニー・スウォープ』は、過激なユーモアと奇抜な映像と音楽で世の中のあらゆる欺瞞を風刺する時代の先駆者そのもののだった。ポスターが刺激的すぎるとして、各地の映画館で掲載拒否運動が起こったというエピソードがあり、「最も悪意に満ちた悪徳の映画」(デイリー・ニューズ)と酷評される一方、ジェーン・フォンダがテレビで「『イージー・ライダー』も凄いけどもう一本見るべき映画が『パトニー・スォープ』」と語るなど、評価は真二つ。アメリカン・ニューシネマの到来に沸くアメリカ映画界においてさえも、『パトニー』の時代の先を行き過ぎた映像感覚と内容の過激さは人々を驚嘆させた。それから50年の時を経て、BLM(ブラック・ライブズ・マター)運動などが声高に叫ばれる現代にその先見性をどのように見るか、2022年の今、まさにタイムリーな作品である。
予告編
『パトニー・スウォープ』-デジタル・レストア・バージョン-は2022年7月22日(金)より渋谷ホワイトシネクイントほか全国で順次公開!
監督:ロバート・ダウニー
出演:アーノルド・ジョンソン