『ベイビー・ブローカー』の来日記念舞台挨拶が6月26日(日)にTOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、イ・ジウン(IU)、イ・ジュヨン、是枝裕和監督が登壇した。
本作は “赤ちゃんポスト”に預けられた赤ん坊を巡り出会っていく人々が描かれるヒューマンドラマ。古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョン(ソン・ガンホ)と、<赤ちゃんポスト>がある施設で働く児童養護施設出身のドンス(カン・ドンウォン)。ある土砂降りの雨の晩、彼らは若い女ソヨン(イ・ジウン)が<赤ちゃんポスト>に預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。彼らの裏稼業は、ベイビー・ブローカーだ。しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づき警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく白状する。「赤ちゃんを大切に育ててくれる家族を見つけようとした」という言い訳にあきれるソヨンだが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。一方、彼らを検挙するためずっと尾行していた刑事スジン(ぺ・ドゥナ)と後輩のイ刑事(イ・ジュヨン)は、決定的な証拠をつかもうと、静かに後を追っていくが…。こうして、<赤ちゃんポスト>で出会った彼らの、予期せぬ特別な旅が始まる―。
ソン・ガンホは『パラサイト 半地下の家族』以来約2年ぶりの来日、カン・ドンウォンは『ゴールデンスランバー』以来約3年ぶり、イ・ジウンとイ・ジュヨンは映画のプロモーションとしての来日は初となる。
冒頭では日本語で「こんにちは、ソン・ガンホです」と挨拶したソン・ガンホ。カン・ドンウォンも「こんにちは、お久しぶりです、カン・ドンウォンです。来ていただいてありがとうございます」と同じく日本語で挨拶し、会場を沸かせた。イ・ジウンは「みなさんに会いたいと思っていました」と笑顔を見せ、イ・ジュヨンは「日本で意味のある時間を過ごすことができていると思います」と喜んだ。
本作でカンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞したソン・ガンホだが、“ベイビー・ブローカー”という役どころに「是枝監督のファンでしたし尊敬している監督でしたので、ワクワクときめきました。『どんな役でもやらせていただきたい、光栄なことです』とお話しました」と振り返った。同じく是枝監督と仕事をしたいと思っていたというカン・ドンウォンは「現場ではとてもやさしくて、最高の監督ですので楽しくいい経験になりました」と振り返った。
是枝監督の誕生日を祝ったというカン・ドンウォンは「一人で過ごすと聞いて、一緒に食事をしました」といい、是枝監督は「2年連続でソウルでドンウォンさんと誕生日を(笑)」と明かし、「よかったです」と笑顔の是枝監督に会場は拍手に包まれた。
「長編の映画に出演するのは初めてだったので挑戦と言えると思います」というイ・ジウンは「さまざまな設定を立体的に表現できるように監督と話しました」と振り返り、是枝監督については「最初にお会いしてみて思ったのは、監督の映画そのままの人だと思いました」と印象を語った。
イ・ジュヨンは「私も是枝監督の作品の大ファンです」と言い、「撮影が終わってプロモーションでも素晴らしい思い出、経験が詰まれていると思います。長く忘れることのない思い出の作品になると思います」と感慨深げに語った。
そんなキャスト陣に、是枝監督は「ソン・ガンホさん、カン・ドンウォンさん、ペ・ドゥナさんはこの映画をやる前から関係がもともとあって。その3人は最初からあてがきをしたんですけど、イ・ジウンさんとイ・ジュヨンさんはコロナ禍で僕が韓国ドラマにハマりまして、見て印象に残った2人にお声がけをした。夢がかなって、ありがとうございます。理想的な思い描いた通りのキャスティングが実現してしまいました」と笑いながら明かした。
これにイ・ジウンは「監督が私のことを知る前に偶然韓国の食堂で監督を見かけて、私は監督のファンだったので挨拶したいなと思ったんですけど、そのまま通り過ぎました。それから1年経って、監督の作品に参加することができて、監督が私の作品や音楽を知っているというととでとても不思議な気分」と明かすと、「そうなんだよね…(笑)」と思い返している様子の是枝監督。一方でイ・ジュヨンは「大学生の時に是枝監督の作品を釜山国際映画祭や韓国の映画館に見に行く学生でした。数年経って、監督が私の作品を見たことがあるとおっしゃってくださって、私と言う俳優を知っていること自体不思議な経験で、それだけで幸せな気持ちです」と語った。
2年ぶりの来日にソン・ガンホは「日本はとても好きですし、食事も好きなのでいつもとても楽しみにしています」と言うが、今回の来日については「昨日成田空港に降りた後、イ・ジュヨンさんは日本でも有名なスターで多くのファンが来るだろうと聞いていました。実際に100人を超えるファンが集まっていたんです。でも、カン・ドンウォンさんを見に3人が来て、私は5人来てくださいましたので気分がいい一日でした」と笑いながら明かし、「ソン・ガンホさんとこれについて長く話した」と笑うカン・ドンウォン。ソン・ガンホは「ドンウォンさんは『パリから来たから3人しかいなかった』と言い訳していましたが、いずれにしても気分がよかった」と笑顔を見せ、会場は笑いに包まれた。
最後にソン・ガンホは「尊敬する是枝監督とご一緒しましたが、日本の監督と韓国のキャストが一緒に作ったことが大事というより、この映画は日本人であっても韓国人であっても、生きている社会の中の私たちの姿、隣人の姿、人生の価値が描かれています。誰にとっても共感できる温かい物語です。意味のある時間として記憶されてほしいと願っています」、是枝監督は「6年前に書いたプロットはシンプルな話でしたが、ソウルに渡って取材を重ねるほど、人間の命をどう考えるべきなのか、それを登場人物たちが悩む話だと、最初に思い描いた話と変わっていました。見た方たちも旅を続けながら、一人の赤ちゃんの運命を考えていただけたらうれしいです」とメッセージを送った。
【写真・文/編集部】
《追加写真》
『ベイビー・ブローカー』は全国で公開中!
監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナ、イ・ジウン、イ・ジュヨン
配給:ギャガ
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