『流浪の月』のティーチインが7月4日(月)に池袋HUMAXシネマズで行われ、横浜流星、李相日監督が登壇した。

実力と人気を兼ね備えた俳優・広瀬すずと松坂桃李の2人が紡ぐ物語は、2020年本屋大賞を受賞し、同年の年間ベストセラー1位(日販単行本フィクション部門、トーハン単行本文芸書部門)に輝いた凪良ゆうによる傑作小説が原作。10歳のときに誘拐事件の“被害女児”となり、広く世間に名前を知られることになった女性・家内更紗を広瀬が、その事件の“加害者”とされた当時19歳の青年・佐伯文を松坂が演じる。いつまでも消えない“被害女児”と“加害者”という烙印を背負い、息を潜めるように生きてきた2人。誰にも打ち明けられない秘密をそれぞれに抱えたまま、15年後に再会した2人が選んだ道とは―。監督を務めるのは李相日。

「暑いと去年の夏を思い出してきて」という李監督は「あれから10か月経ったけど、横浜流星の中で『流浪』前、『流浪』後で変化したことはありますか?」と問いかけると、「今までも作品と役に全力を注いできたつもりなんですけど」と前置きした横浜は「(以前は)作品を平行してやることが多かったので十分な準備期間がなくて、“これで大丈夫かな”という不安がありながらやっていたんですけど、『流浪の月』で準備期間をたくさんいただけて幸せな環境を用意してくださたおかげというもそうだし、監督の現場の姿を見て、より魂込めて、命を懸けて作品、役に熱く向き合わなければいけないなというのは、より感じて。その後の作品はすべてそういう思いでやっています」と語った。これに「ずっと魂込めると疲れない?」という李監督に、横浜は「疲れます(笑)」と笑いつつも「作品が終わったら休みを空けてもらえたりしているので、いいバランスでできているかな」と笑顔を見せた。

本作では「複雑なことを求められる」という役どころに、「ファンの方大丈夫?嫌悪感を残さないといけないし」と横浜の今後を気遣う場面もあったという李監督だが、横浜は「移り変わりが激しいというのは感じていたので、ずっと人気があるなんて保証できないし、自分の代わりなんていくらでもいるからこそ本物にならないといけない」と自身の中での思いを明かした。一方で、「もちろん嫌悪感を抱かれる役」という本作に出演してからは「Instagramやってるんですけど、277万くらいフォロワーがいたんですけど、274万に減っているんです(笑)役者冥利に尽きる」と笑いを誘った。さらに「これからもそういう役とか作品にきっと出るけど、それでも自分のことを応援しようと思ってくれる人を大事にしたい」と言うと会場に駆け付けた観客からは大きな拍手が起こった。

劇中での広瀬すず演じる更紗との関係性については「徐々にという感じでした。撮影前の期間までに関係性を作れるようにたくさん会ったり、待ち受けにしたりとか、ずっと更紗のことを考えることで自分の中で気持ちが芽生えていった」と役作りを振り返った。これに李監督は「近づいていく過程と壊れていく過程はどっちが大変だった?」と聞くと、「関係を作っていくことです(笑)」と即答した。

イベントでは観客からの質問に答えるコーナーが用意されたが、共演者に引き出されたと思うことを聞かれると「つまらないことですいませんが…すべてです」と笑いを誘いつつ、「相手がすずちゃんじゃなかったら、李さんじゃなかったらこうなってなかった」と言い、「こんなに準備期間をいただいてすごい濃い時間なのに忘れているんです。それくらい自分の中でも分からなくて、それをすべてコントロールして引き出してくれたのは(広瀬と李監督の)お二方。周囲で今までで一番『見たよ』という言葉をいただくんですけど、自分の力じゃなくてお二人の力なので感謝です」と李監督に感謝の気持ちを口にした。

本作で特に難しかったことは「関係を作ることです(笑)」と即答する横浜だが、李監督は「相手に委ねたり、相手を全身で信頼するのが難しかったんじゃないかな」と声をかけると、「壁を作っちゃいますよね」という横浜。さらに横浜は「怖いのかもしれない。監督と焼き肉を食べに行った時に、“相手の心を開くには自分が心を開かないとダメだから”と、本当にその通りだなと。自分なりにがんばったつもりです」と李監督からの言葉がきっかけにもなったという。これに李監督は「演出している気がなくて、カウンセリングしているのかなって(笑)」といい、「僕も中高生の時だったら人をすぐに信じられたと思うんですけど、人を信じるのも怖くなってしまいましたけど、今回改めました」と語り、会場は笑いに包まれた。

最後に横浜は「『この作品を見た』という言葉が多くて、自分の中でも挑戦でもあり、この作品を公開したことによってひとつの自分にとっての転換期になったと思っています。本当にたくさんの方に見て欲しいんです。まだ周りで見ていないという方がいたら、ぜひ見てねと伝えてください」とメッセージを送った。

【写真・文/編集部】

『流浪の月』は全国で公開中!
脚本・監督:李相日
出演:広瀬すず、松坂桃李/横浜流星、多部未華子/趣里、三浦貴大、白鳥玉季、増田光桜、内田也哉子/柄本明
配給:ギャガ
©2022「流浪の月」製作委員会