テスト撮影時の様子


東映株式会社は、日本最大のLEDスタジオを新設、2023年1月から実証実験を開始する。

東映は10月1日に東京撮影所に新しくバーチャルプロダクション部を発足し、先端技術による新しい映像制作技術であるバーチャルプロダクションの実証試験に取り組む。また、東京撮影所No.11ステージを横30m × 縦5mのLEDウォールを設置した、現時点で日本最大のLEDスタジオ(スタジオ面積400㎡)としてリニューアルし、2023年1月から運用開始する予定。

同社は今後5年間で約20億円を投資し、制作する映像作品の制作工程で、このLEDスタジオを利用していく。これにより、「先端技術であるバーチャルプロダクション」を含む映像全般のテクニカルフォローができる日本随一のテクニカルチームの育成、背景用のデジタルアセットの制作ノウハウやデジタルアセットの蓄積、当社の制作する映像コンテンツの高品質化などを図る。

仕上がりイメージ

バーチャルプロダクションとは、仮想空間の背景と実物の被写体(俳優や小道具)を同時に撮影し、合成する撮影手法。多くは背景にLEDパネルを設置したもので、背景のLEDパネルに映像やCGIを表示させる。アメリカ、インド、韓国などでは多くのLEDステージが新しく設立され、制作作品数も増えているが(『マンダロリアン』『ザ・バットマン』など)国内では、CMやMVなどで利用されているものの、映画やドラマに使用される例はまだ少ない状況。

従来のグリーンバックを使用したクロマキー合成は、ポストプロダクション工程(撮影後の工程)において多大な加工処理を要したが、LEDウォールを使用したバーチャルプロダクション撮影は、合成工程が不要であり、ポストプロダクション工程の大幅な圧縮が可能になる。また、ロケ地や移動時間、天候に左右されないため、移動等にかかる経費を削減でき、また俳優や監督等スタッフのスケジュールも確保しやすくなる。

さらに、LEDウォールが照明の代わりを果たすため、環境光を自然に作ることが可能となり、照明セッティングの時間が短縮できる。従来のグリーンバックを使用したクロマキー合成と異なり、LEDウォールに映像が映し出されるため、俳優に対し、演技に没入しやすいより良い芝居環境を提供できる。LEDウォールに映す背景用に制作したデジタルアセットは、次回以降の撮影において活用することができ、またスタジオに現物セットを建込み、撤去する時間が不要なためスタジオの稼働率を向上させます。また廃材等も発生せずESG経営につながる。

映画配給会社が自前でLEDスタジオを保有・運用するのは国内初となり、蓄積した新技術自体を活用した企画開発や、今後も日進月歩する映像表現の未来をリードする体制作りが可能となる。