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第35回東京国際映画祭 コンペティション部門出品作品『ザ・ビースト』は、移住して農耕生活を始めたフランス人の中年夫婦が直面する、地元の有力者の一家との軋轢を描いた重厚な心理スリラー。

10月24日(月)~11月2日(水)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区地区で開催される第35回東京国際映画祭。コンペティション部門は、2022年1月以降に完成した長編映画を対象に、107の国と地域から応募された1,695本の中から、厳正な審査を経た15本の作品が期間中に上映される。

とあるフランス人中年夫婦が、自然豊かなスペインの田舎、ガリシア地方の村に引っ越してくる。彼らは田舎暮らしをしながら、人が住めなくなった家をリノベーションして、村に人を呼び戻そうとするが、それがきっかけで村人の反感を買い、隣人からの嫌がらせが始まるのであった。果たして彼らの生活はどうなってしまうのか…。

初めは話を無視する程度の軽い嫌がらせだったものが、暴力的なものにまで発展していく。主人公のアントワーヌは嫌がらせを受け、証拠を残すためにビデオで隠し撮りをするようになるが、そのビデオ映像が表す緊迫感が素晴らしい。今作はアントワーヌ、妻のオルガ、そして娘、と視点が入れ替わるが、特に田舎で暮らす両親を心配する娘視点での描写が、外からみたこの村の閉塞感や隣人の異常さを感じさせ、観客と同じ目線で気持ちを代弁しているようで、感情移入してしまった。隣人がただ恐怖の対象として描かれているのではなく、彼らが嫌がらせをする背景には生まれてからずっとこの村で育った彼らならではの問題があり、双方の食い違う気持ちに切なくなった。サスペンス要素が強いが、夫婦愛、親子愛も丁寧に描かれており、非常に味わい深い作品だと思う。

【文/編集部(E)】

第35回東京国際映画祭は2022年10月24日(月)~11月2日(水)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催
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