『ケイコ 目を澄ませて』の公開記念舞台挨拶が12月17日(土)にテアトル新宿で行われ、岸井ゆきの、三浦友和、三宅唱監督が登壇した。
本作は、聴覚障害と向き合いながら実際にプロボクサーとしてリングに立った小笠原恵子さんをモデルに、彼女の生き方に着想を得て、三宅唱監督が生み出した物語。ゴングの音もセコンドの指示もレフリーの声も聞こえない中、<目を澄ませて>闘うケイコの姿を、秀でた才能を持つ主人公としてではなく、不安や迷い、喜びや情熱など様々な感情の間で揺れ動きながらも一歩ずつ確実に歩みを進める等身大の一人の女性として描き、彼女の心のざわめきを16mmフィルムに焼き付けた。主人公・ケイコを演じた岸井ゆきのは、厳しいトレーニングを重ねて撮影に臨み、新境地を切り開く。そして、ケイコの実直さを誰よりも認め見守るジムの会長に、日本映画界を牽引する三浦友和。その他、三浦誠己、松浦慎一郎、佐藤緋美、中島ひろ子、仙道敦子など実力派キャストが脇を固める。ケイコの心の迷いやひたむきさ、そして美しさ。全てを内包した彼女の瞳を見つめているうちに、自然と涙が込み上げてくる――。
各国の海外映画祭を経て日本での公開を迎えた本作。ケイコ役・岸井は「やっと公開ができて感激しています。もう嬉しい以外の言葉が浮かびません。とても嬉しいです」と挨拶。ケイコ(岸井)を見守るジムの会長を演じた三浦も「上映後の拍手が外にも漏れ聞こえてきたので皆さんが好意的に受け取ってくれたと思っています。きっと海外映画祭でも同じような反応だったのかな?」と喜んだ。三宅監督は「照明がまぶしくて客席がよく見えない!」と会場を笑わせつつ「観客の皆さん全員の眼差しがスクリーンに向かっているなんて…やはり映画館って素晴らしい!」と劇場での封切りに感慨深げな様子。
本作の撮影について「手話やボクシング、フィルム撮影など色々な挑戦をさせてもらいました。最初はケイコを一人で背負わないといけないのかなと思って不安や恐怖があったけれど、撮影の前から三宅組が完成していて、みんなで一緒に映画を作っているのが感じらました」と実感したという岸井。その岸井について三浦は「クランクインの日からボクサーとして体も精神も仕上がっていた。3か月のトレーニングでここまで出来るとは、女優としての凄さも垣間見られます。この映画は岸井さんにとって代表作だと思う」と太鼓判を押した。
岸井演じるケイコを撮る上で意識した点について聞かれた三宅監督は「岸井さんの力!」と岸井の俳優魂を絶賛して「それを邪魔しないように撮ろうと思った。撮りこぼすことはできないぞ!と思っていました」と並々ならぬ気合で対峙した様子。そんな三宅監督について三浦は「任侠映画を撮りそうな見た目をしていますが、神経の細やかな優しい人です」と笑わせて、三宅監督の緊張をほぐしていた。
ケイコと会長が鏡越しで行うシャドーボクシングは、見ている観客までも涙してしまう名シーン。岸井が「会長から差し出された手をケイコが打つところは、その場のアドリブが本編に採用されたもの。ケイコとして喜びを感じた瞬間でもあります」と舞台裏を明かすと、三浦も「目の前に仕上がっているケイコがいるので、何の苦労もなくシーンが成立した」と撮影時の手応えを語った。
さらに三浦は岸井について「岸井さんは可愛らしいでしょう?小柄だし、ケイコって感じがする。でも今日は底の高い靴を履いているよね?いつもはもっと小さいのに」とニヤリとすると、岸井も「普段から竹馬に乗っています!」と息の合ったジョークを披露。また三浦が岸井と松浦慎一郎の高速ミット打ちを見どころに挙げると、岸井はこのシーンについて「どう打つかは決まっておらず、体の動きに合わせて即興で打ち返しました。それもあって終わった後の私の表情は本物です。よっしゃ、できたっ!…みたいな」と満面の笑みを見せた。
最後に岸井は「この映画は生き方のお話です。色々な方に伝わるものがあると思う。皆さんの感想をいくつか読ませていただき、とても感慨深い気持ちになっています。この作品がもっともっと羽ばたいて私たちから見えなくなるくらいまで行ってほしい。“映画”が皆さんにとって大事なものになる、そのきっかけとなるような作品になったら嬉しいです」と思いを込めて語った。
【提供写真・オフィシャルレポート】
『ケイコ 目を澄ませて』は全国で公開中!
監督:三宅唱
出演:岸井ゆきの、三浦誠己、松浦慎一郎、佐藤緋美、中原ナナ、足立智充、清水優、丈太郎、安光隆太郎、渡辺真起子、中村優子、中島ひろ子、仙道敦子/三浦友和
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS