第80回ゴールデングローブ賞で2部門にノミネートされた『逆転のトライアングル』の本編映像が解禁された。

『フレンチアルプスで起きたこと』(14)で第67回カンヌ国際映画祭ある視点部門審査員賞、『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(17)で第70回カンヌ国際映画祭最高賞であるパルムドールを受賞し、本作でカンヌ史上3人目の2作品連続パルムドール受賞という圧倒的快挙を果たしたリューベン・オストルンド監督。驚くべき人間観察眼とセンス抜群のブラックユーモアで、毎度観客を絶妙に気まずい気分にさせてくれるスウェーデンの鬼才が選んだ次なる標的は、<ファッション業界とルッキズム、そして現代階級社会>。そしてもちろん、問題を痛烈に炙り出す手腕は今作でも絶好調。私たちの価値観を見事にひっくり返す、世紀の大逆転エンタメが誕生した。主演は『キングスマン:ファースト・エージェント』のハリス・ディキンソンと、残念ながら本作が遺作となってしまったモデル出身のチャールビ・ディーン。フィリピンのベテラン女優ドリー・デ・レオンや名優ウディ・ハレルソンらも参加し、弱肉強食のサバイバルが繰り広げられる―。

今回解禁された本編映像は、豪華客船の旅のメインイベントといっても過言ではない、船長がお客様をゴージャスにおもてなしする“キャプテンズ・ディナー”のシーン。ワイングラスが床を転がるような大嵐の中開催されたディナーは、船長(ウディ・ハレルソン)のお出迎えから始まる。アルコール中毒で普段は自室にこもりっきりの船長は、クルーの指示に従いながら身支度を整え、不自然に傾いた姿勢で副船長と共にゲストを待つ。

レストランにやってくるセレブたちが次々に船長に挨拶していくが、1人の女性が「船の帆が汚れていた」とクレームを入れてくる。それに対し船長は「(帆は)洗えないと思いますよ。なぜなら発動機船なので帆はついてない」と穏やかに返すが女性は逆上。「カタログで確認した」と否を認めない彼女に船長は慣れた様子で「分かりました。帆を洗いましょう」とウインクし客をなだめるが、これは嵐の前の静けさだった――。

ウディ・ハレルソン、リューベン・オストルンド監督
ⒸTobias Henriksson

毎日世界中のセレブリティから押し付けられる無理難題に応え、そのストレスを酒で洗い流そうとする船長の苦労があらわになるシーン。さすがの貫禄で船長役を演じたのは、名優ウディ・ハレルソン。オストルンド監督はウディとの仕事について「彼とは出演交渉時に、アメリカの左翼と北欧の左翼の違いについて話したんだけど、それがとても興味かった。酔っぱらった船長がセレブたちに『グダグダ言わずに税金を払え』というセリフがあるんだけど、それはウディとの会話からヒントをもらった。僕らスウェーデン人は国への信頼が厚いから、税金は有効活用されると信じている。だけどウディが言うには、アメリカの左翼は『税金なんて払って何になるんだ?ロビイストや軍需産業に流れるだけだろ』と全く信用していない。その考えは僕にはまったくなかったから面白いなと思ったんだ。もともと作家の言葉の引用で船長のセリフの一つにしようと考えていたんだけど、彼からその考えを聞いて、この言葉を何度も登場させようと思いついたんだ」と、ウディとの会話がきっかけで、より面白味に溢れたシーンが生まれたことを明かしている。

さらにこのシーンの撮影についての壮絶な裏話も。本作のレビュー記事を見ると必ず触れられている“地獄絵図”を撮影することを最優先に考えられ、セットは20度の傾斜を作れる回転台の上に作られた。ウディたち俳優陣と撮影スタッフは実際に傾いたセットの上で長い時間を過ごし、現場では実際に船酔いする人が続出。酔い止めを飲みながらの撮影となり、映画の舞台裏自体も地獄のようだったと監督は語っている。

本編映像

『逆転のトライアングル』は全国で公開中
監督:リューベン・オストルンド
出演:ハリス・ディキンソン、チャールビ・ディーン、ドリー・デ・レオン、ウディ・ハレルソン
配給:ギャガ
Fredrik Wenzel © Plattform Produktion