『ザ・ホエール』の来日記者会見が4月6日(木)に都内で行われ、主演のブレンダン・フレイザーが登壇した。
恋人を亡くしたショックに打ちひしがれ、現実逃避をするように過食を繰り返してきたチャーリー(ブレンダン・フレイザー)。歩行器なしでは移動もままならず、親友の看護師リズに頼って生活している。病状の悪化で自身の死期が近いと悟ったことで、長らく押し込め続けたトラウマと向き合うことを決意。さらに離婚して以来音信不通だった娘エリーとの絆を取り戻そうとする彼の最期の5日間を描く。ブレンダン・フレイザーが演じたのは体重272キロ、余命わずかな男・チャーリー。彼はこの役に挑むにあたり、自身の体重増量に加え、特殊メイクとファットスーツを着用して臨んだ。
「日本に戻ってこられて本当にうれしく思っています」と笑顔で挨拶したフレイザーは「昨日は少し時間があったので街を見て、しゃぶしゃぶをいただきました」と明かした。主演を務めた『ザ・ホエール』について「この作品は共感すること、思いやり、愛、何とかつかむ希望の物語でもあります」と紹介し、その作品でアカデミー賞主演男優賞を受賞したことについて「いまだに驚いています。大変光栄でした。(ノミネートされた俳優は)全員が素晴らしい方々なので、みなさんとオスカー像を分かち合った気持ちです」と謙遜した。
15年前にはミシェル・ヨーと来日したブレンダンだが、今回2人そろって初受賞したが「『ハムナプトラ3』以来でした」といい、「再びこういうかたちであうことができてうれしかった。才能にあふれたものすごい勇気の持ち主」と称賛。さらに「『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』も大好きで、発想力もあってクリエイティブで。(同作に出演する)キー・ホイ・クァンも友達ですが再会することができて、『僕らまだここにいるね』と(笑)ミシェルは道を切り開いていく方で、彼女に大いなる経緯を抱いています」と語った。
『ゴッド・アンド・モンスター』(1998)ではイアン・マッケランと共演しているが、アカデミー賞授賞式の3週間前にロンドンでマッケランと再会したことを明かし、「いろいろなお話をしたんですけど『ザ・ホエール』の話だけはしませんでした」と笑いつつ、「お別れするときに、僕の耳元で『もう君はオスカーを獲っているよ』とささやきました。だから、もし金色の像が来なかったとしても自分にはオスカーがきたと思っていました」とエピソードを披露した。
また、「一人の人間として、役者として知る限り全てのことをキャラクターにつぎ込みました」と撮影を振り返るフレイザーは、ダーレン・アロノフスキー監督とのタッグについて「ここまで自分の脆さを表現してくれたと言われたことはなかった。監督と一つの旅をすることができて人生が変わったと思います」と明かした。
本作に出演したことで「父の愛は勝つんだと改めて感じました。だからこそチャーリーが自分の子供との関係性を妥協してしまっているのは計り知れないものだと思いました」と話し、自身と重ね合わせる部分もあったというが、本作の原案・脚本を担当するサミュエル・D・ハンター自身の経験から生まれたということで「そこに彼の真実があった」と思いを語った。
また、「勇気を持ってほしいと伝えたいです。勇気を持つということは壁がそびえ立っていることを認識することだと思います。人間がなるべきヒーローは、自分の前に乗り越えなければいけない壁があるということを認識することだと思います。自分の道のりなんだと認識すること、勇気を持って必要なことをする、そうするとたどり着きたいところへ少しずつ近づくと思います。チャーリーは勇気がある人だと感じていただきたいです。全く想像していなかったかもしれないけど、彼はヒーローです」と語った。
【写真・文/編集部】
『ザ・ホエール』は2023年4月7日(金)より全国で公開
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:ブレンダン・フレイザー、セイディー・シンク、ホン・チャウ、タイ・シンプキンス、サマンサ・モートン
配給:キノフィルムズ
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