『銀河鉄道の父』の花巻市特別試写会が4月5日(水)に岩手県・花巻市文化会館で行われ、役所広司、森七菜、成島出監督が登壇した。

門井慶喜が大量の宮沢賢治資料の中から父・政次郎について書かれた資料をかき集め、究極の家族愛を描いた傑作にして、第158回 直木賞受賞作を映画化した本作。宮沢政次郎(役所広司)は、父の代から富裕の質屋を営む責任感と情熱のある男だが、長男・賢治(菅田将暉)が生まれると子育てに熱心で子供にはめっぽう甘い。宮沢賢治は、長男として質屋を継ぐことに反発して学問の道へ進み、さらに商人家系にもかかわらず農業や宗教の道に進みたいと我が道を行く。父・政次郎と長男・賢治の、人間味あふれる親バカ・ダメ息子のユーモアと苛烈な闘いの日々。そんな2人がお互いうまくいくように指南するなど、賢くしっかり者の妹・宮沢トシ(森七菜)。監督は成島出。

宮沢賢治が生まれ育った岩手県花巻市で行われた今回の特別試写会。花巻市には宮沢賢治の生家を中心に、宮沢賢治記念館や、宮沢賢治童話村など宮沢家の歴史や文化に触れ合うことができる施設も多く、地元を愛し地元に愛された宮沢家の物語を描いた本作の映画公開を地元の多くの人たちが心待ちにしている。

舞台挨拶は、かつて宮沢賢治が教員として勤務していた花巻農業高校の鹿踊部の演舞から始まった。その後、試写会に集まった大勢の花巻市民の大歓声で迎えられ、役所広司、森七菜、成島監督が登壇。宮沢賢治出身の花巻での試写会を迎え役所は「今日は本当にお越しいただき、ありがとがんす」と地元の方言を交えて挨拶し観客の温かい拍手を受けた。森七菜は「花巻のみなさんにご挨拶ができて、とても嬉しいです」と挨拶、成島監督は「温かい拍手をいただいて本当に感激しています。花巻ではたくさん撮影させてもらい、この映画ができました」と語った。

花巻市で行われた撮影を振り返り、役所広司は「この花巻での羅須地人協会などのシーンは、賢治と政次郎さんの関係においては幸せな時。賢治が農業をしながら物語も書きながら…」と映画をこれから鑑賞する観客に向けて映画の詳細を語り始め、「あ、これは言ってはいけなかったか」と途中で言い淀む場面も。森七菜は北上川での撮影を振り返り「太陽待ちで2時間待ちましたが、風や川の匂いなどが心地よく、自然豊かな香り、雄大な自然と大きな青空の下で撮影できました。そのシーンも楽しんでいただけたらと思います」と語った。さらに監督は「撮影していて、自然の豊かさや厳しさ、人の温かさに触れ、(賢治は)この地が産んだ作家なのだと思いました」と撮影を振り返った。

役所広司、森七菜、成島監督の3人は、試写会の前に宮沢清六の孫・宮沢和樹邸(宮沢賢治生家)を訪問し、宮沢賢治が手帳に残した直筆の「雨ニモマケズ」を拝見。宮沢家が守り重要に保管されてきた貴重な実物の手帳を目にした役所広司は「本当に貴重なものを見せていただきました。宮沢家の皆さんが大切に保管されていたものを、手帳の中を開いて文字も見せていただきました。賢治さん自身は、これを人に読んでもらおうと思って書いたわけではないのでしょうけれど、手帳に書かれた言葉の一つ一つが、優れた作家の言葉が羅列されていて、非常に感動しました」と語り、森七菜は「手帳から放たれるオーラがすごくて、恐縮してしまいました。人生において貴重な経験をさせていただきました」と語った。成島監督は「今日、宮沢和樹さんにお話を伺って、実際の手帳を見せていただき、賢治さんが全く世に出そうと思っていなかった、原稿用紙にも落としていない、殴り書いたようなものである事を改めて感じ、とても感動しました」と語った。

さらに、試写会には上田東一花巻市長、達増拓也岩手県知事も参加。上田花巻市長は「花巻市で撮影していただいた映画を、花巻で特別試写会を行なっていただける事に感謝しています」と挨拶、岩手県知事は「宮沢賢治さんは、花巻市はもちろん、岩手県全体を代表する人物です」と挨拶した。

【提供写真・オフィシャルレポート】

『銀河鉄道の父』は2023年5月5日(金)より全国で公開
監督:成島出
出演:役所広司/菅田将暉、森七菜、豊田裕大/坂井真紀/田中泯
配給:キノフィルムズ
©2022「銀河鉄道の父」製作委員会