〈人と人のぬくもり〉と〈いのちの巡り〉を鮮烈なモノクロ映像で描く『せかいのおきく』のインタビュー映像が解禁された。
阪本順治が自身のオリジナル脚本を映画化した本作。舞台は日本が世界の渦に巻き込まれていく江戸末期。寺子屋で子供たちに読み書きを教えている主人公おきく(黒木華)は、ある雨の日、厠(寺所有の公衆便所)のひさしの下で、雨宿りをしていた紙屑拾いの中次(寛一郎)と、下肥買いの矢亮(池松壮亮)と出会う。武家育ちでありながら今は貧乏長屋で質素な生活を送るおきくと、古紙や糞尿を売り買いする最下層の仕事につく中次と矢亮。侘しく辛い人生を懸命に生きる三人はやがて心を通わせていくが、ある悲惨な出来事に巻き込まれたおきくは、喉を切られ、声を失ってしまう…。貧しい時代に逞しく生きる庶民の姿を通じて、人と人のぬくもりを描。
今回解禁されたインタビュー映像の冒頭で、黒木華はおきくというキャラクターについて「おきゃんというか、親にも他人にも思ったことをズバズバ言える元気な人。なので声を失ったことで後ろ向きにならないように」と意識したことを話し、声を失ってからのシーンについては「この時代には手話がないから、ジェスチャーをするにしても、この時代に合ったジェスチャーって何だろう?ってまず考えましたし、 “わたし”や“あなた”は(手で示して)伝えられても、何かの“もの”を表現するのが難しかった」と役作りの苦労を告白。
寛一郎は、池松壮亮との初共演について「楽しかったです。(池松は)僕が尊敬する数少ない役者さんのひとりですから、役のことはそんなに話さなくても、一緒に時を過ごすことでバティ感が出てきた。僕にとっては幸せな時間でしたね」と当時の心境を語り、池松は「カンとは(寛一郎が)俳優を始める前に出会っていて。俳優になってからもずっと見ていたので、やっぱり特別な気持ちがあったんですよね。そういう気持ちを利用して空気感を作っていけたらと思いました」と、初共演ながらすでに2人の間に “特別な絆”が生まれていたことを語った。
また、『せかいのおきく』で遺したいもの、伝えたいことについて問われた阪本監督は「映画は月日が経って古くなるほど“自由”になっていく。だから見続けられることが大事で、どこかで暗闇に消えたとしても、誰かが発見して、発掘してもらえる映画でありたい」と、映画の命が次の世代へと受け継がれることへの希望を語り、美術監督であり本作の企画・プロデューサーを務めた原田満生は「映画が百何十年無くならずに生きているように、このプロジェクト(=YOIHI PROJECT)も100年後の世代の人たちが見て『当時はこんなこと考えてたのか』って話してくれたらすごくいいと思うし、作ってよかったなと思います」と願いを託す。そして黒木も「何かを伝える。それが愛でもいいし、SDGsや循環型社会など(見る人に)何か受け取ってもらえるものがあるのが映画。『伝えたいことがある』というのは、すごく重要なことじゃないかなと思います」と、映画にこめた熱い思いを披露した。
インタビュー映像
『せかいのおきく』は全国で公開中
脚本・監督:阪本順治
出演:黒木華、寛一郎、池松壮亮、眞木蔵人、佐藤浩市、石橋蓮司
配給:東京テアトル/U-NEXT/リトルモア
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