『怪物』完成披露試写会にキャスト陣＆是枝裕和監督、脚本・坂元裕二が登壇

『怪物』の完成披露試写会が5月8日（月）にTOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、中村獅童、脚本を担当した坂元裕二、是枝裕和監督が登壇した。

『万引き家族』でカンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドールに輝いた是枝裕和監督と、『花束みたいな恋をした』などで圧倒的な人気を博す脚本家・坂元裕二、そして『ラストエンペラー』で日本人初となるアカデミー賞作曲賞を受賞し、『レヴェナント：蘇えりし者』や『怒り』など国内外を問わず第一線で活躍した坂本龍一が音楽を担当した本作。出演するのは、安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子ら変幻自在な演技で観る者を圧倒する実力派と、2人の少年を瑞々しくかつ情感豊かに演じる黒川想矢と柊木陽太。その他、高畑充希、角田晃広、中村獅童など多彩な豪華キャストと、まさに怪物級の才能が一堂に集結した。いったい“怪物”とは何か？登場人物それぞれの視線を通した「怪物」探しの果てに、私たちは何を見るのか―。

本年度カンヌ国際映画祭コンペティション部門への正式出品が決定している本作だが、是枝監督は「とても光栄です。だけど、（出品が）決まる前から公開日が6月2日と決まっていて心配だったんです。（出品されることは）そんなに簡単じゃないですよと。結果的にいい感じで参加できることが決まってほっとしています」と安堵の表情を浮かべた。

脚本家の坂元から企画がスタートしたという本作だが「脚本をご自身で書かれている監督ですから。脚本家から見ても尊敬する脚本家です」と語った。一方で、是枝監督は「自分で書かないんだったら坂元さんにお願いしたいとラブコールを送っていたので」と明かし、「読む前に引き受けることは決めていたので、どんな話であれチャレンジしようと思っていました」と振り返った。

『万引き家族』に続いての是枝監督作品への出演となる安藤は「こんなにも早くお声がけいただけると思っていなかったのでうれしかったんですけど、その反面すぐに戻ること、そして坂元さんの脚本であることのハードルが高く感じてしまって、怖気づいてしまい、覚悟を決められない時間が長くなってしまいました」と明かしつつ、「完成した作品を観た時に、参加できてよかったなと。自分の想像をはるかに超えた作品に出させていただけて。映画を観た一員として、感動して涙が止まらなかった」と語った。一方で、是枝監督作品へは初出演となる永山は「俳優を始めてからずっと、“この人は日本映画を変えていくんだろうな”と感じて。（是枝監督と坂元の）お2人の座組に自分が入れたことで幸せ者だと感じています」と語った。

そんな撮影現場では、是枝監督が「マシュマロとイチゴを串刺ししたお菓子を両手に持って、みんなに『いる？』と言って配っていたのが楽しい思い出です」と明かした黒川。柊木は「撮影中に花火を見て、きれいで楽しかったです」と振り返った。2人との共演に安藤は「一緒に作品を作る同士として話し合いをしていく中で、2人のタイプが違うので毎度刺激を受けていて、とても楽しかったです」と称賛した。

また、初めて是枝監督作品に出演した高畑は「インするのが楽しみだったんですけど、初日がみなさんのクランクインで緊張してしまって。とにかく緊張がマックスでセリフ以外なにしゃべったか覚えてないくらいだったんですけど、現場に入ると是枝さんが温かく見守ってくださっている感じだった」と振り返った。

同じく初参加の中村だが、『海街diary』の上映会をプライベートで見に行った際に「楽屋で待ち伏せをして、会話してくださって。『いつか僕を使ってください』と言って、それが2015年。2020年の緊急事態宣言で家にいるときに、“死ぬまでに是枝監督の作品に出られたら”と話していたんです。その数か月後に連絡をいただいたので思いは叶うんだな」と感慨深げに語った。

本作は坂本龍一さんが音楽を担当しているが「撮影中も編集しながら坂本さんの曲を当てさせていただいていたんです。撮影が終わった段階で手紙を書いてオファーをしました」と振り返った是枝監督だが「“全部を引き受ける体力はないけど、音楽のイメージが浮かんでいるので形にしますので、気に入ったら使ってください”というお手紙でした」と返答があったことを明かした。「亡くなられたのは本当に残念ですけど、最後にこういう形でご一緒できたのは自分にとって誇りですし、この作品にとって坂本さんの音楽が必要だったというのは出来上がった作品を観ると、誰よりも自分が強く感じています」と語った。

最後に是枝監督は「特別なものが映っている映画になったと思います。スタッフが試写を観て、『全ての人がいい仕事をしていますね』と言ってくれたのが本当にうれしくて。いいチームができていて、素晴らしい映画ができたと確信しています」とメッセージを送った。

【写真・文／編集部】