光石研、12年ぶりの映画単独主演作『逃げきれた夢』の本編映像が解禁された。
人生のターニングポイントを迎えた中年男が新たな一歩を踏み出すまでの可笑しくも切ない物語を描く本作。映画デビューから45年、日本の映画・ドラマ界を支える名優・光石研の12年ぶりの映画単独主演作。本作では、自身の地元でもある北九州を舞台に、主人公・末永周平を演じる。物語のカギを握る元教え子・平賀南には、総勢800人のオーディションを突破した北九州出身の吉本実憂。主人公の妻・彰子を坂井真紀、娘・由真を工藤遥、さらに旧友・石田を光石本人とも気心の知れた仲の松重豊が務めるなど、フレッシュな演技と熟練の技がぶつかり合う。監督・脚本の二ノ宮隆太郎は俳優としての顔を持ちながらも、映画監督・瀬々敬久が審査員を務めた2019年フィルメックス新人監督賞グランプリで本作脚本が受賞したことをきっかけに興業映画デビューを飾った。また、第76回カンヌ国際映画祭では日本映画史上2作目のACID部門正式出品を果たした。
今回解禁された本編映像は、親子役で共演した光石研と工藤遥が繰り広げる会話シーン。娘とコミュニケーションを取ろうと必死になる父親だが、まったく相手にされず、むしろ心配されてしまう。空回りしている周平(光石研)の姿に全父親が共感必至の重要な場面だ。周平の娘・由真役を演じる工藤遥は、2018年より女優として活動を開始し、2020年には『のぼる小寺さん』で映画初主演、近年はドラマ「ダブル」(WOWOW)や1月クールドラマ「ブラザー・トラップ」(TBS)に出演するなど、活躍の場を広げている注目の若手俳優の一人。
映像は、周平が由真に「付き合っとる人とかおらんの?」と声を掛けるも、「なんなん?今日、ほんと」と怪訝そうに返事をする由真のセリフを皮切りに、どこか居心地の悪いリアルな親子の空気感が伝わってくるワンシーン。「お前の彼氏に“娘さんを僕にください”ちゅ言われたら、父さんどうするっちゅ思う?」など突飛な質問を続けて娘とのコミュニケーションを試みる周平に対して、由真は真顔で父を見つめながら「気持ち悪すぎなんやけど」と冷たく言い放つ。親子の複雑な関係が浮かび上がるこのシーンは、周平の人間臭いリアルな可笑しさと切なさが見事に映し出されており、パッとしない彼の日常をありありと描き出す重要な場面となっている。
父という役作りについて光石は「娘がいないので、20代の娘との接し方が分からない。たぶん、(娘が)いてもわからない。だから“わからない”という風にして演じていいのではないかと思っていました」と本作の演技に自然体で挑んだ様子。対する工藤は「私は普段、家族仲が良いので、由真を演じる時は自分の思い描く家族からひたすら引き算でした」と役作りの大変さを語っている。
本編映像
『逃げきれた夢』は2023年6月9日(金)より新宿武蔵野館、シアター・イメージフォーラムほか全国で公開
監督/脚本:二ノ宮隆太郎
出演:光石研、吉本実憂、工藤遥、杏花、岡本麗、光石禎弘、坂井真紀、松重豊
配給:キノフィルムズ
©2022『逃げきれた夢』フィルムパートナーズ