広瀬すず主演映画『水は海に向かって流れる』の原作者・田島列島とピース・又吉直樹のスペシャル対談映像が公開された。

田島列島がユーモラスかつセンシティブな独特の筆致で描くのは、26歳のOL榊さんと高校生の直達を中心に、曲者揃いのシェアハウスの面々の想定外の日々を綴った、家族の元を離れて始まる、家族の物語。主人公・榊千紗を演じるのは『流浪の月』での好演の高い評価が記憶に新しい、広瀬すず。映画にドラマ、作品を重ねるごとに飛躍してきた広瀬が、クールで感情を表に出さない大人の女性を繊細に演じ、新たなステージに挑む。監督は、『そして、バトンは渡された』『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』など、心潤す数々の群像劇を世に送り出してきた前田哲。人と人との向き合う過程を優しく描き、心の揺れ動きや溢れ出る感情を丁寧に映し出す。

今回、原作者の田島列島と、自身のYouTubeチャンネルでも原作ファンを公言しているピース・又吉直樹のスペシャル対談が実現、2人の対談動画が公開された。原作漫画との出会いについて又吉は、漫画好きの後輩たちとの情報交換の中で話題になっていたことで作品を知ったことを明かし、「物語がおもしろく、家族以外の人と住む設定はよくみるが、その中のどれとも重なっていない、物語の構造がすごく面白い」と話す。さらに「登場人物がとても魅力的」「いたずらに悪い奴がいない。みんな実際に自分の周りにいそうな人物」と榊さんや直達、クセ者揃いのシェアハウス住人たちの魅力を語る。

その上で特に「セリフがすごい好き」と力を込めて話す又吉は、自身もコントや小説を書く中で、ドラマ等を見ながらセリフを当てるのが好きだが、田島列島のセリフは「読めない」と笑う。「いい意味でちょっとずらしている。質が高い」と田島の生み出すセリフに感心し「だからこそ刺激的で読みたくなる」「この物語の中で流れている時間と同じようにゆっくり読んだ」と原作を楽しんだ様子を振り返る。それを聞いた田島は「お話をつくったり、ネタをつくったりしている人に褒められるのはすごく嬉しい」と喜びの表情を見せた。

原作の実写化にあたって不安がなかったかと又吉に問われた田島は「映画化は全部お任せする」とあっけらかんと話す。映画化された『水は海に向かって流れる』について又吉は「原作の魅力的なキャラクターたちが、少し形が変わった部分もありましたが、新たにすごく個性的でおもしろい、魅力的なキャラクターになっていた」「原作の好きなキャラクターがそのまま使われているところもたくさんあって、すごく僕は好きでした」と率直な感想を話す。

一方で田島は、映画の中で印象的だったシーンとして、原作にはない直達が全力疾走するシーンに言及し「漫画で走っているシーンを描いてもあまりグッとこないが、直達が走っているだけで胸がいっぱいになる」と話すと又吉も「人間の身体を通すからこそ伝わるものがありますよね」と共感する。また又吉は、物語の中で、榊さんや直達が抱えているものが映画の中で爆発するシーンを挙げ、「原作でもすごく好きなシーンだが、その一連の場面、どのセリフも、とても好きでした」と明かした。

田島は「榊さんの感情を任せる人がこの人でよかった」と、広瀬が演じた榊さんを改めて称賛。又吉も、笑顔を見せない榊さんという役について「内面に消化しきれない大きなものを抱えているキャラクターだが、そのことを周りに積極的に語るわけでもない、自分の中にとどめておこうとしている」と分析した上で、「無表情ではなくて、ちゃんと自分の抱えているものへの抵抗みたいなものがずっと表情に出ている」「喜怒哀楽とか、言葉で言語化できるわかりやすい感情ではなくて、もうちょっといろんな要素が複雑に混ざっている状況の顔ができる、すごく稀有な方だなと思った。演じているという意識が介在していないよう」と広瀬の演技を絶賛する。その後も、原作が完成に至るまでの執筆時のエピソード、劇中にも多数登場する榊さんの豪快料理に関するエピソードが明かされ、さらに、対談が決まってから又吉の「人間」を読んだという田島は、「書きたいものがあって書くのか」と又吉に質問するなど、共に執筆活動をする2人だからこその、創作の原点に関する話も展開される。

スペシャル対談映像

『水は海に向かって流れる』は全国で公開中
監督:前田哲
出演:広瀬すず
大西利空、高良健吾、當真あみ/勝村政信
北村有起哉、坂井真紀、生瀬勝久
配給:ハピネットファントム・スタジオ
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